日本における人口減少や高齢化による労働人口の減少は社会問題ですが、中高年がその中心的な役割を担っている建設現場では、労働者数の減少は特に深刻な状況にあります。きつい、汚い、危険の3Kと呼ばれる建設現場の労働環境は、働き方改革とは縁遠く、若い人材から敬遠されがちであることは否めません。
国土交通省では、経済成長を実現させるために、労働者数の減少という危機に対し、それを上回る生産性向上でチャンスに変えようと、平成28年から「生産性革命プロジェクト」を打ち出しました。そのうちのひとつであるi-Constructionは、建設業界に情報通信技術ICTを導入するという施策です。ここでは、i-Constructionについて詳しく解説します。
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i-Construction(アイ・コンストラクション)は、平成28年から国土交通省が取り組む「生産性革命プロジェクト」のひとつです。i-Constructionについて詳しく解説します。
i-Constructionは、土木や建設現場の業務プロセスのすべてにICTを取り入れることにより、生産性の向上を図る取り組みのことです。
ICT(Information and Communication Technology)とは、情報通信技術のことで、「IT(Information Technology)情報技術」によってデジタル化された情報を、通信を使ってやり取りする技術です。土木や建設現場の調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新まですべての作業にICTを導入し、その情報を活用することで、効率的な作業と生産性の向上が期待できるという取り組みです。
では何故、i-Constuructionが推進されることになったのでしょうか。その背景と目的は次の通りです。
i-Constructionが推進されるようになった背景には、建設産業を取り巻く状況があります。建設産業に対する使命が増大し、社会経済が好転しているにも関わらず、それを担う労働者数は不足しています。以下に、i-Construction推進の背景を解説します。
日本では人口減少や超高齢化により、労働者数の減少が留まるところを知りません。団塊世代の多くが、2025年には後期高齢者となり、これまで建設現場を支えてきた中高年層の離職者が増えることが想定され、建設業界の労働者数の減少は深刻です。
建設現場の3K「きつい、汚い、危険」という旧態依然とした厳しい労働環境が、若い方たちに敬遠される傾向にあることも、労働者数の増加が見込めない理由の1つです。
近年のさまざまな大災害に対する防災・減災対策、インフラの老朽化に対する管理や更新、インフラのストック効果など、安全と成長を支える建設産業に対する使命がより明白になっています。
公共事業関連費は10年連続で6兆円規模と高い水準であることや、建設企業の経営環境が改善傾向で、建設投資にも積極的になっています。
i-Constructionの主な目的は、ICTを全面的に導入して生産性を向上させることですが、その結果として、建設現場の働き方改革につなげることも目的のひとつです。
i-Constructionを推進するにあたり、国土交通省は平成28年にトップランナー施策として、トンネル工事などと比較して特に生産性の向上が遅れている土工とコンクリート工を中心に、次の3つの柱を掲げました。ここではトップランナー施策の3本柱について説明します。
土木工事において、ICTを全面的に活用することが1つ目の柱です。土木工事における測量、設計・施工計画、施工、検査のすべての工程において、全面的にICTを導入し3次元データを活用することで、大幅に生産性の向上につながります。
以下に、生産性の向上が期待できる、ICTを活用する具体的な事例をあげます。
工程 |
ICT活用事例 |
生産性が向上するポイント |
---|---|---|
測量 |
・ドローンによる写真撮影 |
短時間で3次元測量が可能 |
設計・施工計画 |
3次元測量データの活用 |
・3次元設計図の作成 |
施行 |
ICTで自動制御された重機(ICT機器) |
経験の浅い労働者が早期に活躍できる |
検査 |
ICT土工用監督・検査要領 |
・検査日数の短縮 |
コンクリート工における全体最適の導入が2つ目の柱です。全体最適の導入とは、構造物の設計、発注、材料の調達、加工、組立等の一連の生産工程や、その後の維持管理を含めたコンクリート工のプロセス全体を通して、技術的、社会的、経済的に最適な設計をおこなうことです。
従来コンクリート工は、建設現場ごとに最適な工法や工種で設計がおこなわれるという部分最適であったため、部材や材料は、現場ごとの受注生産や現場製造に頼っていました。全体最適の導入とともに、部材の規格を標準化し、工場であらかじめ制作された「プレキャスト製品」を使用することで、コスト削減、サプライチューンの効率化、工期の短縮による生産性の向上を図ることが期待できます。
施行時期の平準化が、3つ目の柱です。施行時期の平準化とは、年間を通して施工量を安定化することで、限られた人材を効率的に活用するということです。
特に公共工事は、予算成立後に入札手続き等がおこなわれるため4~6月の工事量が少なく、12月~翌年3月に工期が集中するというように、工期の偏りが激しいことで残業時間が増加する原因となることが問題視されています。これは、発注の方法や時期を変えることで対応が可能となることから、積極的に取り組むべき施策です。
i-ConstructionとCIM(Construction Information Modeling)はいずれも、建設現場における生産性の向上に寄与する取り組みです。
その違いは以下の通りです。i-Constructionは、すべての建設現場に複数のICT技術の活用をすすめて、生産性を向上させる取り組みのことであり、CIMは、そのi-Constructionの複数のICT技術のうちのひとつです。つまりCIMは3次元モデルをベースにi-Constructionの推進に拍車をかけるエンジンともいえます。
では、どのような違いがあるのでしょうか。両者の違いを以下にご紹介します。
|
i-Construction |
CIM |
---|---|---|
特徴 |
建設業界へのICT技術全般の活用 |
3次元モデルの活用 |
対象分野 |
土木・建設工事全体 |
CIM:土木分野 |
目的 |
・生産性の向上 |
・関係者間の情報共有 の促進 |
関係性 |
複数のICT技術の活用をすすめる取り組み |
i-Constructionを構成する複数のICT技術のうちのひとつ |
主な技術 |
ICT技術全般 |
3次元データを利活用する技術全般 |
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