あらゆる産業分野で進むDX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、建設業界も例外ではありません。むしろデジタル化を推進しなければ、建設産業は10年を待たず立ちいかなくなる可能性すらあります。なぜ建設DXが必要なのか、導入の背景やメリット、実現するために欠かせない新技術の数々を詳しく解説していきます。
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建設業界の、人手不足、長時間労働、低生産性などの課題解決に向けて注目をされているのが「建設DX」です。建設DXは、国土交通省を中心に推進され、2021年には、「建設DX推進計画」が策定されました。ここではまず、建設DXとは何か、その背景について、簡単に説明します。
DX(デジタルトランフォーメーション)とは、「社会構造の変化や技術の進歩により大きく変化する市場に対応するため、企業がデジタル技術を駆使して組織や企業文化を変革し、競争力を強化するための新しい手法や価値を創造すること」と考えられています。
建設業界では年々就業者が減るなかで高齢化が進み、令和4年には建設技能者の25.7%が60歳以上となっています。ますます深刻化する人手不足に対応するため、デジタル技術を利用してひとり当たりの生産性を向上させ、処遇改善と働き方改革を同時に進めていくことが建設DXの役割です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が必要とされる背景には「2025年の崖」と呼ばれる問題があります。
企業の基幹システムが老朽化し、「爆発的に増加するデータを活用できない」「業務の基盤が維持できない」「事故や災害、不十分なセキュリティ対策によるデータの消失」などを要因として、2025年以降には年間12兆円もの経済損失が生じるリスクがあることから「2025年の壁」と呼ばれており、これを回避するには早急にDXを進める必要があります。
また、新型コロナウイルスによるパンデミックでテレワークやオンライン会議が増加したこともDX推進の追い風となりました。紙の図面や手書きの報告書など、アナログ的手法が当たり前だった建設業界でもオンライン化やデジタル化が進み、建設DXが求められる大きな要因となりました。
建設業界は1992年をピークに下降の一途をたどり、2010年の建設投資額はピーク時の半分、約42兆円まで落ち込みました。その後はゆるやかに回復基調となりますが、2022年現在、建設投資はピーク時の約80%となる67兆円、就業者数はピーク時の約70%、479万人まで減っており、さまざまな課題を抱えています。
2022年の建設技能者は約302万人で、約455万人だったピーク時の7割以下に減少しています。今後10年以内には、さらに現在の技能者の4分の1が離職すると見込まれており、人手不足は深刻さを増しています。
建設業の労働時間は他の産業に比べて年間68時間も長く、週休2日制の導入も進んでいません。2025年4月には改正労働基準法が適用され、労働時間の上限が引き下げられるため、早急な対応が求められます。
2022年現在、技能労働者の約26%は60歳以上で、これからの建設業の担い手である20代の技能者は全体の約12%しかいません。若い世代が魅力を感じる業界に変革し、若手入職者を増やしていく必要があります。
建設業の賃金は2011~2022年の11年間で約25%伸びています。しかし、下請けだけを見ると賃金額は製造業を下回っており、業界団体では技能労働者の賃金を5%アップする取り組みを進めるとしています。
技能労働者全体の約26%が60歳以上で、20代の労働者が約12%しかいないため、多くのベテラン技能者が技術やノウハウを継承できないまま離職してしまうことが予想されます。人材育成も建設業の大きな課題です
導入が急がれる建設DXですが、導入することによって具体的にはどのようなメリットが得られるのでしょうか。
ドローンや3次元モデルなどのデジタル技術を活用することで測量や計画・設計段階から業務が効率化されます。また、作業工程も事前に検討することができ、シミュレーションによってあらかじめ生産性を向上させた作業を実際の工事に反映することができます。
AIやコンピューターを用いた自動化により、作業時間の短縮と正確性が向上され、作業者ひとり当たりの業務負担が大幅に軽減されます。デジタル技術によって作業の一部が代替されることで、省人化や無人化が進み、その結果として人手不足の解消に役立ちます。
これまでは現場で作業をおこないながら、ベテラン技能者が実際にやって見せ、口伝えで技術やノウハウを伝授していました。こうしたベテランの技術をデータ化・見える化することで技術の伝承を容易にします。また、AIが機械学習によって技術を習得し、ベテラン技能者と同等の作業を一部自動化することも可能でしょう。
ドローンやAIカメラを利用して、人が立ち入れない場所での監視や作業、安全確認が可能となります。人の手を介さず精度の高い危険予知や危険回避が可能となり、作業者と現場の安全性が向上します。
建設DXではさまざまなデジタル技術を利用して、人にはできない危険な作業や生産性の大幅な向上などを目指しています。これからご紹介するのは建設DXにおける代表的なデジタル技術です。
AIは適用範囲が非常に広く、画像認識による外観検査では、人間には不可能なスピードでの検査が可能で、検査時間を大幅に短縮します。また人の目では判別できない瑕疵や傷などを瞬時に発見し、省人化や無人化に加えて品質の向上を実現します。危険予知・危険回避に利用すれば人の手を介さず事故や災害を未然に防ぐことが可能です。
屋外で活躍するドローンは建設業と親和性が高く、工事の最初から最後まで活用が可能です。これまで測量は作業者が測量機器を操作し、建設用地をくまなく歩きながらおこなうのが当たり前でした。そのため、高所や未開拓地、災害現場などの測量には、時間と費用がかかるだけでなく、時には危険を冒して測量しなければならないケースもありました。
ドローンによる空からの測量では短時間で低コスト・高精度の測量が可能となるだけでなく、人が立ち入れない場所や、人にはできない高度からの詳細な測量も可能となります。
BIM/CIMとは、調査、計画、設計の段階からコンピュータで実物と同じ形状を3次元画像化する技術です。2次元の紙の図面ではイメージが伝わりにくく、オンラインでの打ち合わせを難しくしていましたが、BIM/CIMを使用すれば事前に構造物の詳細な仕様検討が可能となり、異なる部門間での情報共有や共同作業も可能となります。
ICT施工はi-Construction3本柱のひとつで、ICTを活用した施工の流れを指します。BIM/CIMを活用した3次元測量・設計・施工管理に加えてICT建機による施工をおこない、3次元データを納品するまでをICT施工と定義しています。
ICT建機とは、コンピュータと高速無線通信、衛星測位などを用いた自動運転や遠隔操作で操作が可能な建設機械を指します。作業効率と安全性が向上し、オペレーターの経験値に依存しない作業が可能となります。
介護や物流業界で普及が進むパワーアシストスーツを始め、自動搬送ロボットや溶接ロボット、作業ロボットなどの開発が進められています。すでに建設現場に導入された実績もあり、ロボットの導入が進めば作業者がきつい労働から解放され、女性や若者世代の増加にもつながることでしょう。
最新のICT・デジタル技術を活用する建設DXは、建設業界が長年抱える人手不足、生産性、高齢化の問題を急速に解消できる可能性を秘めています。建設DXによって建設業界に劇的な変革がもたらされ、建設産業が活性化することが期待されています。
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