「建設業界は今後どうなるの?」と将来に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。建設業界は社会情勢の影響を受けやすく、さまざまな課題を抱えているのは事実です。
では現在はどのような状況で、どのような課題があるのでしょうか。ここでは建設業界の現状や課題、将来性などについて解説していきます。
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目次
まずは建設業界の現状についてみていきましょう。
近年の建設業界は「建設バブル」といわれるほどの好景気を迎えていました。その背景として挙げられるのは、2020年オリンピックでの五輪需要や東日本大震災の復興需要、建設コスト抑制による工事採算の改善などです。さらに、2019年に消費税が増税されたことによる、駆け込み建築の増加もさらなる追い風となっていたからです。
その影響で建築物の工事はもちろん、周辺のインフラ工事なども多く実施されたことにより、建設業界は活況となっていました。また、今後も大阪万博やリニア新幹線、東京の都市再開発など、大規模な開発が予定されており建設業界の好景気はまだまだ続くと予想されていました。
建設バブルといわれるほどの好景気である一方、建設業界では倒産件数も増えています。帝国データバンクの2014〜23年建設業の倒産件数と負債総額によると、2023年の倒産件数は2022年と比べて38.8%増加の1,671件とされています。その背景にはコロナウイルスによる宿泊・外食産業の業績不振となり、設備工事・内装工事の受注数の減少があります。また、資材高騰や人手不足といった要因があり、資金不足や完工時期の遅れなどが倒産に拍車をかけている状況なのです。特に中小建設企業がより厳しい状況にさらされているのが現状です。
建設業界では、2019年に施行された「働き方改革関連法」が、5年の猶予措置を経て2024年4月1日に実施されました。働き方改革関連法とは、時間外労働の規制をするための法案です。
これまでの建設業界は、雇用者と労働者の間で協定を結んでいれば、時間外労働や休日労働に対する上限は設けられていませんでした。しかし、2024年4月1日より、原則として時間外労働は月45時間、年360時間と上限が設けられます。特別な事情がある場合でも、単月で100時間未満、2〜6ヵ月平均80時間以内、年720時間以内に収めなければなりません。
時間外労働の上限を超え、違法な労働をさせている企業には、懲役刑や罰金刑が科せられてしまいます。
このように2024年4月より建設業界では従来の働き方を変えていく必要に迫られています。
建設業界はどのような課題を抱えているのでしょうか。具体的にみていきましょう。
建設業界の慢性的な人手不足は深刻な課題の一つです。国土交通省によると、2021年の建設業界における就業者数は479万人で、ピークの1997年より約30%減少しているとされています。特に建設現場で働く技術者や技能労働者の人手不足は深刻で、建設需要があったとしても対応できる人が足りていない状況です。これ以上人手不足を深刻化させないためにも、早急な対応が求められています。
建設業界では労働者の高齢化が進んでいます。国土交通省の「建設産業の現状と課題」によると、60歳以上の技能者は全体の約4分の1(25.7%)を占めており、10年後にはその大半が引退する見通しとなっています。
労働者の高齢化は人手不足を加速させる要因の一つです。建設業界が衰退しないためにも、若手の人材を確保し、専門的な技術を継承していかなければなりません。
建設業界は他の業界と比べて、労働時間が長いことが課題に挙げられます。国土交通省の「最近の建設業を巡る状況について」によると、2021年の建設業における年間総実労働時間は1978時間とされています。これは全産業にあたる調査産業計の1632時間と比べて340時間以上も多く、建設業の労働時間がいかに長いかを示しています。また2001年と2021年での労働時間を比べると、全産業では255時間減少しているものの、建設業では約50時間程度の減少にとどまっており、労働時間の削減も進んでいないことがわかります。
長時間労働になる背景には、数多くの工事をこなさなければならないことや、納期を守るために残業を強いられることなどが挙げられます。若手の建設業界離れを防ぐためにも、今後は労働時間の見直しを図っていかなければなりません。
建設業界は収入が安定しにくいことも課題に挙げられます。国土交通省が実施したアンケートによると技能労働者の6割以上が日給制であり、加えて現場稼働の有無や天候状況によって仕事が変動することが、収入が不安定な理由の一つです。以前と比べ、社会保険の加入は改善傾向にありますが、物価高騰によるコスト上昇も労働者の低賃金に影響を与えています。
また、経験や技能が適切に評価されにくく、有能な技能労働者が働きに見合った賃金を得られていない場合も少なくありません。収入の問題は労働者の離職に直結するため、早急な対策が求められます。
建設業界の課題を解決するためには、今後どのような取り組みが求められるのでしょうか。具体的な解決策についてみていきましょう。
建設業界の人手不足を防ぐためには、まず長時間労働の見直しが重要です。例えば、週休二日制の導入、残業時間外労働の規制、適切な工期設定などの対策は、結果的に労働時間の短縮につながるでしょう。
前述しましたが2024年4月より時間外労働の上限規制が適用されています。厳守できない場合には事業者に対して罰則が課されるため、現在多くの企業において時間外労働を含む建設現場での働き方が積極的に見直されています。
建築業界の課題解決には、労働者の処遇改善も欠かせません。企業によっては社会保険に加入していない場合があり、これが建設業界の大きな問題となっています。
また、技能や経験に優れている労働者には適切な評価をして、それに見合った処遇を実現することも重要です。労働者の技術や経験を見える化する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の普及が望まれます。
CCUSとは労働者の経験や資格、社会保険の加入状況などをシステム化して登録・蓄積する仕組みです。国土交通省が建設業界の対策として普及に取り組んでおり、利用する企業が増えていけば、労働者の処遇改善にもつながることでしょう。
ICT化を推進して業務の効率化を図ることも、今後の建設業界にとっては重要な対策です。ICTとは「情報通信技術」のことで、具体的にはドローンや3次元測量データ、無人化・自動化施行技術などを指します。今後普及することで、時間短縮・コスト削減、 ミス削減・品質向上、安全性の向上などさまざまなメリットが期待されています。
しかし、ICT化には高額なコストがかかること、労働者の高齢化により新技術の浸透が困難なことなどの問題もあり、思うように普及してないのが現状です。これらの問題を解決して、ICT化が普及していくことが今後の建設業界には求められるでしょう。
今後の建設業界はどうなっていくのでしょうか。建設業界の将来性と需要について見ていきましょう。
昨今の物価高騰や少子化問題などがありますが、住宅や商業・教育施設などの建設は継続的にあると考えられます。近年においては温暖化の影響による豪雨や台風、さらに大地震などの発生も懸念されており、災害発生を見越したインフラ整備の建設需要も高まっています。そのような観点からも、建設業界は今後も必要とされていくでしょう。
今後は老朽化した集合住宅や商業施設の修繕工事が増えることが予想されます。その理由として、バブル期に建てられた多くの建築物がすでに築25年以上経過しており、大規模な修繕工事を必要とする建物が多く存在しています。とりわけ排水管や外壁などは標準的な耐久年数を超えている場合が多く、修繕工事の発注が増加することが見込まれます。
現在、建設業界の働き方改革が施行されており、今後は働きやすい労働環境になることが予想されます。国土交通省も建設業界の人手不足、若手離れを解決するための政策を進めている状況です。労働時間の規制、作業効率化などをはじめとする政策が整えば、現職の人だけでなく、これから就職する若い人たちにとっても働きやすい環境が整っていくことでしょう。
近年、アジア圏内を中心に経済成長が著しく、多くの国で建設需要が増加しています。それらの需要に応じることで、今後も我が国の建設業界に対する需要は伸びていくことが予想されます。また新型コロナウイルス感染症の影響で、停滞していた海外の仕事も再開し始めており、今後さらに建設業界は活性化していくことでしょう。国内だけでなく、海外においても我が国の建設業界の将来性は見込まれているのです。
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