「休日が少ない」ことで知られている建設業。建設業では、他業種のように週休二日がスタンダードになっている企業はごく一部に限られているのが現状です。
しかし、2019年の「働き方改革関連法」の施行から5年が経過し、ようやく建設業における労働環境も大きく変わろうとしています。2024年4月1日以降、建設業において「働き方改革関連法」が適用され、時間外労働の上限規制が設けられることにともない、国土交通省や日本建設業連合会(日建連)が中心となって、建設現場に週休二日を定着させる取り組みをはじめているのです。週休二日を導入することによって、労働環境はどのように変化するのか、詳しく解説します。
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建設業は、わが国の経済活動や生活インフラの発展・維持に欠かせない重要な役割を担っていますが、労働人口の減少や若者離れの影響により、常に人手不足の課題を抱えてきました。
さらには、建設業の特徴として、工事の受注量や時期に波があること、そして天候によっても業務の進捗が左右されるなどの事情もあり、長時間労働が常態化しています。
実際に、国土交通省の資料「建設業を取り巻く現状と課題」に掲載されている2022年度(令和4年度)の産業別の労働状況のデータをみると、建設業については、年間の出勤日数は全産業に比べて12日多く、年間の総実労働時間についても全産業に比べて68時間長くなっており、長時間労働の実態が浮き彫りになっています。
しかし、ライフワークバランスが重視され、働き方改革が加速する現代において、長時間労働や休日が少ないという建設業のイメージ自体が、若者離れや人手不足の大きな要因になっていることから、建設業会自体も危機感を持って、労働環境の改革に取り組もうとしています。
日本で働くすべての企業には、雇用関係のある就労者が労働する時間は、労働基準法によってその上限が設けられています。これを「法定労働時間」といいます。法定労働時間は、原則的に1日8時間、1週40時間です。また企業は、少なくとも週1日、もしくは4週間を通じて4日以上の休日を従業員に与える必要があります。
しかし建設業では、人手不足や工期の関係などでこの法定労働時間を超えて時間外労働又は休日労働が必要なケースがほとんどです。そのため、企業と就労者はあらかじめ「36 (サブロク)協定」を締結し、労働基準監督署に届け出ることで、時間外労働をしています。
現在、一般的な業種の時間外労働の上限に関しては、2019年に施行された「働き方改革関連法」によって
と定められており、災害時の復旧・復興事業を除いてどのような事情があってもこれを超えて労働させることはできません。
しかし、建設事業・自動車運転業務・医師などの業種に関しては、人手不足などの事情を考慮し、この「働き方改革関連法」の適用までに5年間の猶予が与えられていました。2019年の「働き方改革関連法」の施行から5年がたち、2024年(令和6年)4月1日より、ようやく建設業にも時間外労働の上限規制が施行され、今後ますます労働環境の是正が求められることとなります。
建設業への「働き方改革関連法」の適用は2024年(令和6年)4月からです。施行後は、たとえ36協定を締結していたとしても、上限規制を超えて労働することはできません。「働き方改革関連法」では、週休二日制を義務として定められていませんが、時間外労働自体に上限が設けられるため、以前のように休日を設けず連日出勤することができなくなり、多くの建設現場で週休二日を取得しやすくなる見込みです。
令和5年5月31日公表の国土交通省の「適正な工期設定による働き方改革の推進に関する調査」によると、建設業の休暇の取得状況については、週休二日以上を取得している人は全体の約1割程度にとどまり、多くの人が週休二日を確保できずに、4週6休程度にとどまっています。国土交通省は、公共工事・民間工事どちらの場合でも、週休二日制を推奨してきましたが、人手不足が著しい建設業では週休二日を実践している企業は一部にとどまっている現状にあります。
建設業で週休二日制を導入するためには、当事者である企業の努力だけでなく、発注者も含めた業界全体での理解と協力が求められています。そこで、国土交通省は建設業の働き方改革を円滑に進めるため「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定し、長時間労働の是正に向けた取り組みとして、週休二日制導入を後押しすることを明記しています。
具体的には、公共事業における週休二日工事の実施件数を大幅に拡大したり、民間工事でもモデル工事を実施し、業界内で共有するなどの取り組みを進めています。さらに、発注者に対しては、「適正な工期設定等のためのガイドライン」を策定し、長時間労働を防止するための適正な工期設定のありかたについて発信しています。
日建連もまた、2017年にすべての建設現場において週休二日を実現するための基本方針・具体的な方策である「週休二日実現行動計画」を発表し、働き方改革を進めています。具体的には、全建設現場における週休二日(つまり土日の閉所または4週8閉所)の実現を目指して、改革に取り組んでいます。
週休二日の導入が他の業種では当たり前に行われているのに対し、建設業では導入しきれていなかったことが、若手離れや人手不足の大きな要因の一つとして挙げられます。週休二日制をめぐる問題の他にも、長時間労働や給与体系の見直しを含む処遇改善など、建設業が今後解決していかなくてはならない課題は山積しています。
たとえば給与体系の見直しに関して、適切な賃金水準を担保することや、技能労働者の能力の評価により、技能や経験にふさわしい給与を支給する仕組みづくりや社会保険加入の徹底などの取り組みが必要です。
現場での生産性向上も業界が取り組むべき大きな課題です。これまでの建設業では、担当者が現場におもむく対面業務を重視されてきました。しかしこれからは、通信技術やロボット技術、調査・測量の生産性を向上させるICT建機の導入や遠隔臨場の導入などをはじめとするリモートワークを活用するなど、作業効率を高める工夫が求められます。
発注者に対しても、働き方改革をめぐる建設業の取り組みの理解を求め、無理のない工期設定を呼び掛ける活動も必要です。
誰もがやりがいを持って働ける、クリーンな労働環境を実現するためには、従来のやり方をただ単に踏襲するのではなく、建設業が一丸となって改革を進めなくてはなりません。
建設業に週休二日制を導入した場合、どのようなメリットがあるでしょうか?期待できるメリットについて詳しくみてみましょう。
週休二日制を導入することにより、技能労働者がしっかりと休息できるようになり、心身の健康状態が良くなります。連日にわたって漠然と長時間労働を続けるよりも、肉体的・精神的負担が軽減できるので、不注意による事故やケガを防止し、安全に作業に取り組めることが期待できます。休日にオンオフの切り替えもしやすくなるので、勤務に対するモチベーション向上も期待できます。
週休二日制が定着すれば、技能労働者にとってより働きやすい職場を整えることができます。企業がライフワークバランスを尊重する姿勢をみせることで、これまでの建設業の「休日が取れない」という印象を払拭し、若者の離職防止や新たな人材確保につなげることができます。
週休二日制になると、これまでのように長時間の残業や休日出勤をして対応していたことも対応できなくなる場合が出てくることが予見されます。休日をしっかり確保しても、従来通りの生産性を担保するためには、デジタルツールの導入などによる業務効率を高めるための仕組みづくりが急務となります。タブレット端末やアプリケーション、クラウドサービスなどを活用することで、オンライン上での書類管理や打ち合わせ、遠隔による作業指示など、業務の効率化が期待できます。
週休二日制を定着させることにより、技能労働者のライフワークバランスを尊重するクリーンな職場としての企業イメージの向上につながります。持続可能な社会を目指すSDGsの取組においても“すべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用を促進する”という目標が掲げられており、建設業においても技能労働者がやりがいをもって働ける環境づくりに取り組むことで、企業としての責任を果たす姿勢を示すことができます。
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