建設業界で注目されるICT施工とは?最新の関連技術や活用事例を交えて解説

人手不足と高齢化という重大な課題を抱える建設業界を根本的に変革するため、政府はi-Constructionを推進しており、民間企業では建設DXが進められています。これらの取り組みを具体化する手段として、建設の「施工」に「ICT」を導入したICT施工が活用されています。最新のテクノロジーを活かしたICT施工および関連技術、さらに実際の活用事例をご紹介します。

この記事はこんな読者におすすめ

  • ICT施工とは何か知りたい
  • 建設に利用されるテクノロジーについて知りたい
  • ICT施工の活用事例について知りたい
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建設業界とICT施工

建設業界は機械化により、この数十年で飛躍的な進化を遂げました。数十年前までは、高層建築物も手計算による設計ととび職人による手作業に支えられていましたが、現在ではコンピュータと建設機械が設計施工の中心となっています。

しかし、建設業界を取り巻く環境は依然として厳しく、人手不足や資材の高騰、工期の短縮、環境への配慮などから、さらなる合理化が求められています。そのため、建設業界の課題を解消するとともに、生産性の大幅な向上を目的とするICT施工が推進されるようになりました。

ICT施工とは、建設現場にICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)を導入することで省力化を図り、作業効率を改善して生産性の向上と安全の担保を目指す新しい建設手法です。

建設業界の課題

建設業界の就労者数はバブル期後の1990年代後半から減り続け、2022年にはピーク時の7割程度にまで減少しています。さらに、現場を支える建設技能者の高齢化が著しく、全体の4分の1が60歳以上となっています。

建設業界は若年労働力の不足により長時間労働が常態化し、生産性は全産業平均を下回っています。さらに、建設資材およびエネルギーの高騰、就労者の賃金引き上げや働き方改革による処遇改善など、課題は山積しています。

特に、社会全体の少子高齢化が進む中、新しい労働力の確保と省人化を両立させ、生産性を向上させることが建設業界最大の課題であり、早急な産業構造の改革が求められています。

建設現場でICTを活用する目的

建設現場でICTを活用する主な目的として以下の3点が挙げられます。

1.省力化・省人化

建設機械の遠隔操作や作業ロボットを導入することで、最終的には建設現場を自動化・無人化し、安全で効率の良い作業を可能にする。

2.調査設計の精度・効率を向上

ドローンやレーザースキャナーを用いた3次元測量、AIによる設計支援などにより、調査設計の精度向上と合理化を図り、工期の短縮とコストダウンを実現する。

3.事故・災害防止

監視カメラや各種センサー、作業者デバイスによる作業状況や環境変化をリアルタイムでモニタリングすることで、事故や災害のリスクを大幅に低らし、本質的な安全の担保を実現する。

ICT施工の関連技術

ICT施工には、建設機械の自動化や遠隔操作を可能とする衛星測位、高速無線通信、AIやクラウドサービスなどのテクノロジーが活用されています。これらのほかにも、調査設計から保守管理に至るまで、ICT施工をサポートする多くの最新技術が利用されています。

BIM/CIM(Building/ Construction Information Modeling)

ビル建築のプロセスにおいて、調査、測量から設計、施工、維持・管理まですべての段階で3次元モデルを用いて情報共有を図る手法をBIMといい、対象を建築物だけでなく道路や橋、ダムなどの土木工事まで拡張したものをCIMと呼びます。
すべての関係者が3次元イメージを共有することで、設計段階での修正や、施工前の作業内容の検証が可能となります。事前にミスの要因を洗い出すことで、手戻りを減らし、工期短縮を実現します。

IoT

IoTとは家電や車両、産業機械などの「モノ」をインターネットに接続し、様々な情報を収集する技術です。建設現場では、作業者、建設機械、工事車両などからIoTによって収集された情報を、作業状況の把握、トラブル発生時の迅速な対応、資材や建機の管理、危険個所の探索などに活用します。
工事の進捗や作業者の状態、資材の管理などをリアルタイムで可視化することで、効率の改善のみならず、コストの削減や最適化にも寄与します。

ドローン

従来の測量は、技術者が現地に赴いて用地を隅々まで歩き回っておこなうため、時間と人件費がかかるだけでなく、危険な場所への立ち入りも課題となっていました。ドローンを使用することで時間と費用の削減になるだけでなく、災害現場や危険な場所、人が立ち入れない高所での測量も可能となります。
また、測量データの3次元モデル化も容易で、施工管理や竣工後の保守点検、補修などにも利用できるため、現在、ドローンは建設業界に欠かせない技術となっています。

ロボット

ロボット専業メーカーによるパワーアシストスーツをはじめ、建設会社自らが開発を進める搬送ロボットや溶接ロボット、吹付作業や天井施工ロボット、墨出しロボットなど職人に代わる作業ロボットも実用化が進んでいます。
ロボットが人に代わって3K作業をおこなうことで、建設業にクリーンで安全なイメージを持ってもらうことも大きなメリットのひとつです。

AI

あらゆる分野で利用が進むAIですが、建設業界でも様々な用途で活用されています。過去の設計資産から新規プロジェクトに最適なデータを抽出し、各現場に合わせた提案をするAI設計支援、AI画像解析による測量の自動化、災害事例を解析して類似する現場や作業の危険予知活動をおこなうAI危険予知、画像認識による足場や外壁のAI外観検査など、AIはすでに建設工程のすべての段階で応用されています。

ICT施工の事例

ICTの活用には具体的にどのような技術や方法があるのか、導入による効果も含め、実際のICT施工例をご紹介します。

ドローンを使用した3次元測量

ドローンは測量から施工時の工程管理、資材・機械の管理など、建設現場で幅広く活躍しています。盛土管理のために、ドローンによる空撮画像を解析して3次元データに変換するシステムを使用しています。従来の徒歩での測量に比べ、効率良くデータ計測を実施しています。

建設機械の自動運転

バックホウによる法面整形工事の事例では、オペレーターは建機に搭乗せず、自動作業を目視確認しながら無線で操作をおこないます。細かい制御はコンピュータがおこなうので熟練者でなくとも工事品質が担保できます。
道路やダムなど土木工事の事例では、ブルドーザーや振動ローラーに制御用コンピュータと衛星測位システム、レーザースキャナーを搭載し、オペレーターが手元のタブレット端末から作業プログラムを入力するだけで、自動運転による無人作業がおこなわれます。
建機の自動運転は、現状では単純な作業しかおこなえませんが、5G高速通信を利用してオペレーターが映像を見ながら遠隔操作をする「リアルタイム遠隔運転」もすでに実用化されており、今後の普及が期待されます。

AIによる資材・機械の管理

AIもICT施工に欠くことのできない重要な技術で、設計支援から施工管理、竣工後の保守メンテナンスまで建設工事の全段階で活用されています。AIによる資材カウントシステムでは、足場板やパイプ類など仮設資材をスマホで撮影するだけで、資材の搬入搬出時の数量確認時間が大幅に短縮され、数量間違いなどのミスを防止できます。
また、ドローンによる空撮動画からAIが資材や建機を認識するシステムでは、資材の不足や過剰発注を防ぎ、人による巡回や記録が不要となります。建設機械には、上空から識別できるようにタグなどを取り付けておくことで、点検や稼働スケジュールを管理することができます。

近年の建設産業は、長きにわたる低迷期をようやく脱しようとしています。将来の建設業界にとって現時点におけるICT利活用は必要不可欠であり、ICT施工は建設業が生産性および競争力を取り戻すための切り札といえます。

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