施工管理の仕事は、現場の監督と工事の進捗・品質管理が主な内容ですが、文書作成などのデスクワークも多く含まれます。文書作成は現場業務終了後に行うことが多く、日常的に長時間の残業が発生しがちです。施工管理の残業時間が長くなる理由を明確にし、時間外労働の上限規制と施工管理の働き方改革を推進する取組みについて解説します。
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建設現場において施工全般を管理する「施工管理」は、建設業就業者のなかでも特に残業が多い職種です。令和5年5月に発表された国土交通省の「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」によると、施工管理に従事する技術者の13.09%が、1か月あたり平均45時間超の残業をしています。また、1か月の最大残業時間は42.60%が45時間超、19.13%が80時間を超えています。
引用:国土交通省「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」
施工管理の仕事は、工事が始まる前の施工計画からスタートし、工事の進捗に応じた調整業務や工程管理、作業者の指導と監督、報告書などの文書作成まで、現場で発生する業務のほぼ全てに関わります。一方で、工期に対する実稼働日数や時間が限られていること、アナログ的な対人・対物業務が多いことなどから、施工管理の残業時間は長くなりがちです。
前述の国土交通省調査報告によると、工事の発注者から提示された工期における現場全体の休日は4週4閉所または4週6閉所が多く、注文者から提示された工期では全体の14%しか週休2日制が確保できません。
その上で、工期内に工事を完了させるためには休日出勤や早出・残業で対応しなければならず、工事の進捗に遅れが生じればさらに残業時間が増えることになります。施工管理の残業時間が長くなる最大の理由は工期不足にあり、工事の進捗に大きく影響を受けることになります。
施工管理の仕事は「工程・安全・品質・原価の4大管理」が中心となりますが、その多くをアナログ的な対人・対物業務が占めており、業務時間の短縮を困難にしています。
工程管理では、悪天候による日程変更や施工ミスによる工事のやり直しなど、突発的なトラブルへの対処が必要となります。進捗状況により、人員の再配置や増員、資材の追加手配、建設機械の確保など臨機応変な対応で時間が生じる場合があります。
建設現場ではさまざまな職種の作業者が同時進行で作業に従事しており、高所作業や建設機械による危険作業もあります。事故や労働災害を防ぐため、施工管理は常に変化する現場のパトロールを行い、危険個所の把握に努めなければなりません。その他、ケースバイケースで異なる、近隣住民や通行人への配慮も施工管理の重要な仕事であり、想定外の業務が生じることもあります。
施工中の建築物の品質を担保するには、仕様書や設計図書を基に、工法が守られているか、強度や耐震・耐火性は十分か、などを確認する必要があります。施工管理は実際に現場を巡回して、寸法や仕上げのチェック、写真撮影による記録などの管理業務を行うため、膨大な時間を要します。
原価管理については他の管理業務と異なり、デスクワークが中心となります。ただし、無駄な作業や資材を減らすためには、やはり現場での確認作業が欠かせず、時間を要する場合があります。
このように施工管理の仕事は、現場などへ実際に赴いて確認や調整を要するアナログ的な業務が多いため時間がかかってしまい、時間外労働が前提となって業務を行っているのが現状です。
2024年4月1日から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。労働基準法では労働時間を1日8時間、1週間で40時間を上限と定めています。この「法定労働時間」を超えて時間外労働をさせる場合は、労働基準法第36条に基づき労使間での協定、いわゆる「36(サブロク)協定」を締結しなければなりません。
36協定で定める時間外労働の上限は原則的に1か月45時間、年間360時間までとされています。繁忙期や納期の遅れなど、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも年間720時間以内、1か月の時間外労働が45時間を超えることができるのは年間で6回が上限とされています。
ほかにも時間外労働(早出・残業)と休日労働(休日出勤)を合わせて1か月100時間未満、2~6か月の月平均80時間以内という基準が設けられており、違反した場合は6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。
引用:厚生労働省「建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
時間外労働の上限規制が適用され、建設業における施工管理の時間外労働の短縮は喫緊の課題です。施工管理補助や施工管理アシスタント、建設ディレクターなど施工管理をサポートする職域が増えつつありますが、人材の確保や育成に課題が残ります。施工管理の時間外労働を減らすためには、適正な工期の設定とDXによる業務効率化に取り組むことが求められます。
施工管理の残業時間が長くなる主な原因は「工期不足」にあります。先に挙げた国土交通省の「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」によると、最初に工期を設定するのは85%が注文者であり、受注者である建設企業の39%が、注文者の提示する工期に対して「著しく短い」あるいは「短い」と回答しています。
また、最終的な工期は「注文者と協議を行い、受注者の要望も受け入れられることが多い/半々程度の割合で受け入れられる」との回答は52%で、残りは「受注者の要望は受け入れられないことが多い」「注文者の意向が優先され、協議に応じてもらえないことが多い」「注文者の意向を優先し、協議は依頼しないことが多い」と回答しています。
特に下請工事を主としている建設企業では26〜31%が「協議を依頼しない」と答えており、下請から元請あるいは上位下請に対して工期調整の協議は依頼し難いようです。
ゆとりをもたせた適正な工期設定には、「適正な準備期間、工事条件についての注文者の理解」」の回答が最も多く、国土交通省では独自に開発した「工期設定支援システム」の活用等による適正な工期設定を呼びかけています。こうして工期にゆとりを持たせることで官民挙げて時間外労働を減らすことを目指しています。
建設DXと呼ばれる建設業界のデジタルトランスフォーメーションには、AIやドローンの活用、ICT建機の導入、BIM/CIMによる3次元データの共有など、さまざまなデジタル技術が利用されています。施工管理の業務効率化にはDXの取り組みが欠かせませんが、費用や人材の問題もあり、下請工事を主とする中小の建設企業ではデジタル化やICT活用の遅れがみられます。
DXツールのなかでもスマートフォンやタブレットで使用できるアプリやクラウドシステムは、低コストで導入時教育も比較的容易です。これらのツールを利用すれば元請と協力会社がリアルタイムで情報を共有でき、本社オフィスからの現場サポートが可能となります。
またCCUSと連携したクラウド型勤怠管理システム、グループウェア、労務や安全書類の作成支援ソフト、工程進捗管理サービスなどの導入により、施工管理の業務効率化、残業時間の短縮が期待できます。
建設業にも時間外労働の上限規制が適用された現在、施工管理の残業時間を減らす取り組みとして、業界全体の適正な工期設定に対する理解促進と、DXによる業務効率化の早急な推進が求められます。
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