建設業における有給休暇の取得状況と、取得率向上のための対策について解説

働き方改革関連法の施行により、労働者がそれぞれの事情に応じて柔軟な働き方を自ら選択できるよう、建設業においても労働環境の整備が進められてきました。有給休暇の取得率向上の取組もそのひとつです。人手不足や天候によって工程が左右されやすいという課題を抱える建設業には、有給休暇の確実な取得と共に、生産性との両立が求められます。本記事では、現在の建設業における有給休暇の取得状況と取得率向上のための環境づくりや対策について解説します。

この記事はこんな読者におすすめ

  • 建設業の有給休暇取得状況について知りたい。
  • 建設業の有給休暇について幅広く知りたい。
  • 建設業で有給休暇の取得率を上げるための対策について知りたい。
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建設業における有給休暇の取得状況

有給休暇が取りづらいといわれている建設業。実際の有給休暇の取得状況について、厚生労働省が公表している「就労条件総合調査(令和5年)」のデータを基に、その実態をみてみましょう。このデータは、労働者30人以上の企業約6400社を16種類の業種に分け、業種ごとの労働環境について調査したものです。その結果、令和5年度の建設業における労働者1人あたりの有給休暇平均取得率は63.5%、平均取得日数については、10.3日でした。同じ年の全業種の有給休暇平均取得率が62.1%、平均取得日数は10.9日であったことから、ほぼ全体平均と同程度であることがわかります。全16業種における建設業の有給取得率の順位は7位でしたが、最も有給取得率が高かった電気・ガス・熱供給・水道業(74.8%)とは大きな開きがあります。

労働者1人あたりの有給休暇平均取得率順

順位

業種

有給休暇平均取得率

1位

電気・ガス・熱供給・水道業

74.8%

2位

生活関連サービス業、娯楽業

73.7%

3位

教育、学習支援業

65.8%

4位

複合サービス事業

65.4%

5位

製造業

65.3%

6位

情報通信業

64.2%

7位

建設業

63.5%

7位

宿泊業、飲食サービス業

63.5%

9位

医療、福祉

63.4%

10位

学術研究、専門・技術サービス業

62.3%

11位

サービス業(他に分類されないもの)

61.3%

12位

運輸業、郵便業

59.1%

13位

卸売業、小売業

57.5%

14位

不動産業、物品賃貸業

55.5%

15位

金融業、保険業

54.4%

16位

鉱業、採石業、砂利採取業

49.1%

出典:就労条件総合調査(令和5年)第五表より

有給休暇とは

有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して与えられる休暇のことで、正式名称は「年次有給休暇」です。業種や業態、正社員やパートに関わらず、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与される休暇であり、取得しても賃金が減額されません。年次有給休暇が付与される要件は2つです。

  1. 雇い入れの日から6か月間継続して勤務していること
  2. その期間の全労働日の8割以上出勤したこと

この要件を満たすと、労働者は10日間の有給休暇を取得することができます。
2019年4月1日の働き方改革関連法の施行により、上記の要件を満たす労働者を雇用している企業には、有給休暇の取得義務化(年5日以上)が適用されました。これにより、労働者が有給休暇を取得する権利に加え、義務になったことで、現在では有給休暇が取得しやすくなっています。

建設業の有給休暇取得率向上のための対策

現在、有給休暇の取得権利のある労働者に対しては、年5日以上の有給休暇を取得させることが義務づけられています。しかし、人手不足の問題を抱える建設業において、日常業務に支障をきたすことなく、有給休暇の取得率を上げるには、業務の効率化や人材確保などの工夫が必要です。有給休暇取得率向上に必要な対策について紹介します。

効率化

技能労働者が有給休暇を取得しても、これまでと同水準の業務を遂行するためには、ICT ツールの活用などにより建設計画を効率化させることが有効です。ICT建機の導入によるレベル・位置の測量の自動化や、ドローンやレーザースキャナによる起⼯測量や⼟量算出、クラウド・WEB会議システムの共有など、テクノロジーの活用によって業務をスマート化し、現場の技能労働者の業務量を減らしていくことが大切です。さらに、BIM(ビム)を活用した事前シミュレーションや「作業の⾒える化」による施⼯状況の共有によって、計画的に業務を進めることも可能になりました。このように、業務を効率化し、だれもが共有できる仕組みを導入することで、たとえ現場の担当者が有給休暇を取得しても、業務の遅延や他の技能労働者への負担増などのリスクを回避し、質の高い施工を提供することができます。

人材の確保

企業には技能労働者が有給休暇を取得しやすいよう、人材を確保し、余裕のある職場環境を整備することも求められます。これまでの建設業界は、長らく定着していたいわゆる3K(「きつい」「汚い」「危険」)のネガティブイメージのために若者から敬遠されてきたこともあり、人材不足と高齢化が大きな社会問題になっています。ぎりぎりの状態で施工を回してきた現場では、「有給休暇が取りづらい」ことが常態化するケースもあります。しかしこれからの建設業界では、働き方改革関連法に則った労働環境や賃金・処遇の見直し、テクノロジーを活用したスマートな施工管理の取組について広くアピールし、新たな人材を呼び込むことが必要です。

2024年4月1日からは、建設業においても、時間外労働時間に上限が設けられ、週休2日制を新たなスタンダードにしようという動きが加速するなど、働きやすい環境づくりが広がっており、イメージアップを図っています。さらに、現場で働きながら、配管技能士やとび技能士、フォークリフト運転や低圧電気取扱業務、測量士、危険物取扱者など、さまざまな建築技能・技術資格の取得をサポートする制度を設けるなど、技能労働者のキャリアアップを支援することで、向上心のある若者人材を集める取組もはじまっています。

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