建設業における日給月給制のメリット・デメリットとは?有給休暇取得や残業手当の実情についても解説

日給制や月給制など複数の給与形態が存在する建設業において、日給月給制は一般的な給与形態の一つです。特に現場の技能労働者に多くみられる給与形態であり、あらかじめ決まった月額をベースに、働けば働いた分だけ稼ぐことができるという利点がある一方で、悪天候等で欠勤が続くと収入が減ってしまうというリスクが存在します。この記事では、建設業における日給月給制のメリットやデメリット、有給休暇取得や残業手当などについて詳しく解説するとともに、働き方改革が進む建設業における給与形態の変化についても考察します。

この記事はこんな読者におすすめ

  • 建設業における日給月給制それぞれのメリットとデメリットについて知りたい
  • 建設業における日給月給制の有給休暇と残業について知りたい
  • 建設業の給与形態が月給制に移行する理由を知りたい
Webセミナーのお申込みはこちら

建設業の日給月給制とは

建設業における日給月給制とは、1日を計算単位として給与の月額(1ヵ月当たりの給与総額)をあらかじめ決めておき、遅刻・早退・欠勤があった場合に、その分を月額から減額して支給する給与形態です。1ヵ月分の給与は、会社が定めた給料日に支払われます。

日給月給制は、基本となる月額は決まっているため、休暇や遅刻・早退が無ければ給与は満額支給されますが、休むとその分だけ、給与が減ることになります。例えば、悪天候で野外作業が中止になり、出勤できなかった場合、その日の賃金が発生しないことがあります。

また、日給月給制では、欠勤した日は、各種手当なども日数に応じて控除されるのが一般的です。
建設業において、日給月給制は現場で働く技能労働者に比較的多く見られる給与形態です。

日給月給制における有給や残業について

日給月給制でも年次有給休暇(いわゆる有給)が取得できます。もちろん残業をした場合は残業代が支払われます。日給月給制における有給と残業の扱いについて詳しく解説します。

日給月給制でも有給が取得できる

有給とは、一定期間勤続した労働者に対して与えられる賃金が減額されない休暇の通称で、正式名称は「年次有給休暇」といいます。まず有給の取得については、雇用形態に関わらず、以下の2つの要件を満たした全ての労働者に与えられる権利として労働基準法第39条によって定められています。

●年次有給休暇の付与要件

  1. 雇い入れの日から6ヵ月間継続して勤務していること
  2. その期間の全労働日の8割以上出勤したこと

これらを満たすと、労働者は10日間の有給休暇を取得できます。有給の日数は、勤続年数に応じて増えていきます。
有給を取得する時期や日については、原則として労働者が「○月〇日に休みます」と指定することができます。

日給月給制の給与形態について、たとえば「悪天候などで出勤できなかった日があると、その日数分の給与が減額される」と上述しました。しかし、このようなケースにおいて、欠勤する日に有給を充てることができれば、給与が減額されずにすみます。

残業時間に応じて残業代が支払われる

日給月給制でも、所定労働時間を超えて働いた分は、残業代が支払われます。さらに、実際に行った残業が、法定労働時間(1日8時間または週40時間)を超えた場合には、割増賃金が支払われます。残業が23時から翌5時までの深夜帯にかかる場合は、割増率が上がります。

日給月給制における残業代は以下の計算式によって額が決定します。

  • 法定内残業:1時間当たりの賃金×残業時間
  • 法定外残業:1時間当たりの賃金×残業時間×1.25
  • 深夜の法定外残業:1時間当たりの賃金×残業時間×1.5
    (1時間あたりの賃金は、「日給÷1日の所定労働時間」から算出)

建設業の日給月給制のメリット・デメリット

建設業における日給月給制のメリット・デメリットを解説します。

建設業の日給月給制のメリット

日給月給制のメリットについて説明します。

月額固定給による安定した雇用

日給制の場合、経済の景気が悪化すると、仕事が減り、収入が大きく減る可能性があります。しかし、日給月給制であれば、月額固定給があるため、日給制と比較して経済の景気の影響を受けにくく、雇用が安定し、収入が大きく減る可能性が低くなります。

毎月一定額の給与が見込まれる

日給制の場合、収入が変動するため、生活設計を立てにくいというデメリットがあります。一方で、日給月給制であれば、(欠勤などがあれば減額されるものの)毎月一定額の給与が支払われるため、家賃や光熱費などの固定費を安心して支払うことができます。また、ボーナスや賞与が支給される場合もあり、収入がさらに増えることもあります。

働いた分だけ収入アップ(繁忙期)

建設業は、工期や天候に左右されるため、繁忙期と閑散期が明確に分かれています。繁忙期には、残業代や深夜手当が支払われるため、月収が増加する場合があります。さらに複雑な作業をこなせる職人や、現場を統率できるリーダーなどは評価され、さらに収入が増える傾向があります。

建設業の日給月給制のデメリット

続いて日給月給制のデメリットについて説明します。

日常的にある減収リスク

実際に契約通りに働くことで、月給が支給されますが、それを阻む事象が発生すると減収となります。例えば自己責任である遅刻・早退・欠勤だけでなく、不可抗力の悪天候による現場作業の中止やケガや病気など日常的に起こりえる様々な要因が減収につながるリスクとなります。

残業が減ることによる減収、雇用リスク(閑散期)

閑散期には残業が減少するため給与がほぼ固定の月給のみとなり、残業代などで月収が大きく増加する繁忙期と比べると収入が大幅に減少する可能性があります。また、閑散期にはリストラが行われるリスクもあり、月給制と比べると収入と雇用の安定性が低いといえます。

月給制への移行

建設業では、これまで日給月給制という給与形態が主流であり、働いた分だけ稼げる日給月給制を好む技能労働者が一定数存在しました。しかし、近年、業界内で広く用いられてきた「日給月給制」から「月給制」への移行が進んでいます。
この移行には、建設業が抱えてきた以下のような背景と、それを解決するための「働き方改革」の促進が関わっています。

●建設業が抱えてきた課題

  • 人材不足(高齢化・若手不足)
  • 長時間労働
  • 技能労働者の待遇

建設業では、2024年4月1日に「働き方改革関連法」が建設業にも適用されたことを受け、週休二日制が新たなスタンダードとして導入され、時間外労働に上限が設けられたことで、以前のように日給月給制で稼ぐことが困難になっています。

国土交通省が2016年に策定した「建設産業政策・2017+10」や、2017年に示した「建設業の働き方として目指していくべき方向性」においても、働き方改革による週休二日の確保が、技能労働者の総収入の減少につながるおそれがあるとして、月給制への移行を促しています。

また、人材確保や処遇改善の観点からも、より安定性のある月給制への移行を進め、技能労働者が安心して働き続けることができる環境を整えることで、若手人材や優秀な人材の確保が期待できます。

ただし、日給月給制から月給制への移行に際しては、スキルのある人材を適材適所に配置することで業務生産性の向上に努めることが不可欠です。そのためには個々の技能労働者のレベルや能力がしっかりと評価され、ふさわしい処遇(給与)が得られるような仕組み作りが求められます。国土交通省は2018年に「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定し、技能者の能力・経験等に応じた処遇改善を目的とした評価制度として、CCUS(建設キャリアアップシステム)を提唱し、2020年から運用しています。CCUSとは、個人IDが付与されたCCUSカードを技能労働者が常に現場に携帯し、「いつ、どの現場に、どの職種で、どの立場(職長など)で働いたのか」を就業履歴として電子的に記録・蓄積し、資格や講習の受講履歴などの情報を合わせて登録することで、業界横断的に個人のスキルや経験を見える化し、共有することができます。これからの建設業では、CCUS等を活用し、技能労働者の能力に応じた適正な給与形態へと移行していくことで、建設業界全体の業務生産性を高めることが求められます。

Buildeeの導入をご検討中の方へ

お申込後すぐ視聴できる!Webセミナー開催中!

建設現場の働き方改革は難しい?生産性向上のための現場DX解説WEBセミナー
労務安全書類はペーパレス化できる?グリーンファイルを電子化したほうが良い理由を解説!
– さらなる生産性向上を実現できる現場へ -2024年問題徹底解説Webセミナー

この記事を読んだ方におすすめの記事

課題

建設業の残業規制はどう変わる?時間外労働の上限規制について詳しく解説

2024年4月から、建設業においても時間外労働の上限規制の適用がなされています。時間外労働の上限時間は、例外を除き月45時間・年360時間となり、超えることはできなくなり、もしも違反すれば罰則が科せられます。建設業の時間外労働の上限規制について解説します。

制度

建設業における有給休暇の取得状況と、取得率向上のための対策について解説

建設業における年次有給休暇の取得率、取得率の最新データと他業種との比較や、建設業の有給休暇取得率向上のための対策について解説します。いま建設業に求められるICTを活用した業務効率化と人材確保による労働環境の整備について紹介します。

目次