土木業界の今後の展望は?高齢化、人手不足の中で、持続的な成長を実現させる取り組みやDXについて解説

社会基盤となるインフラを維持管理し、人々の安全と社会の発展を支えてきた土木業界。インフラの老朽化や自然災害等への対応のため、土木業界の重要性はますます高まっていますが、業界内では技能労働者の高齢化や担い手不足等の課題を抱えています。
今回は、土木業界の課題とその対応策について解説します。

この記事はこんな読者におすすめ

  • 土木業界の今後の展望について知りたい
  • 土木業界の抱える課題と対応策について幅広く知りたい
  • 土木業界のDXについて知りたい
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土木業界とは?

土木業界は、建設業界の一部であり、人々の生活や産業発展の社会基盤となるインフラの建設、維持管理、改良を担う業界です。対象となる業務は、道路、橋梁、トンネル、ダムの建設・メンテナンス、河川、港湾、堤防、海岸の整備・メンテナンス、空港の建設、上下水道工事の他、土地区画整理工事やビル・マンションを建てる前に地盤をならす土地造成工事など、多岐にわたります。

土木業界の仕事の大半は、国や自治体から発注される公共工事が占めており、ゼネコン(総合建設業者)を通して、下請け業者に業務を割り当てられ、工事を実施する流れが一般的です。

土木業界は、日本の高度経済成長期において、都市や産業の発達、経済成長を牽引する重要な役割を果たし、現在では、既存のインフラ設備の維持・管理や情報化社会に対応した新たなインフラ整備、災害対策の強化など、現代社会の発展と安全を守る新たな使命を担っています。

土木業界の現状と課題

社会の発展と安全を守るために欠かすことのできない土木業界ですが、社会環境の変化に伴い、土木業界は様々な課題に直面しています。
土木業界の現状と解決すべき課題について、以下にまとめます。

土木業界の現状

近年、わが国の政府投資による建設投資額(建設のうち建築補修(改装・改修)を除く)が、年々増加しており、それに伴って土木業界のニーズも高まっています。
(一財)建設経済研究所による「建設経済モデルによる建設投資の見通し(2024年4月)」では、2023年度の政府分野投資額は、23 兆 3,000 億円(前年度比4.3%増)、2024年度は 23 兆 6,400 億円(前年度比1.5%増)に達する見込みで、順調に増加しています。

政府投資による建設投資額の増加の要因のひとつとして、政府による社会インフラの改修が挙げられます。現在、国内に存在する道路橋、トンネル、河川、下水道、港湾等の社会資本ストックの大半は高度経済成長期に集中的に整備されたものであるため、建設後50年を経過し、修繕・維持を必要とするインフラの割合が年々増えており、これを土木業界が支えています。具体的には、橋梁の架け替えやダムの改修、高速道路、上下水道の整備などが急速に推進されています。

また、各地で相次ぐ地震・水害から国民の生活と生命を守るため、政府は「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を実施しており、令和2年から5年間におよそ15兆円程度の事業を推進しています。これにより、流域治水対策や災害に強い市街地形成、道路ネットワーク、鉄道等の機能強化などの工事が実施されています。

このように、政府による積極的な建設投資を受け、土木業界が担うべき業務が増加しています。

土木業界が抱える課題

土木業界は、技能労働者の高齢化や若手人材の不足など、様々な課題に直面しています。
土木業界が抱える課題について詳しくみていきましょう。

技能労働者の高齢化と人手不足

土木業界を含む建設業界全体の課題として、技能労働者の高齢化と慢性的な人手不足の問題を抱えています。
国土交通省のレポート「建設業の働き方改革の現状と課題」によると、令和4年(2022年)の建設業就業者:約479万人のうち、60歳以上の技能者は全体の約4分の1(25.7%)を占めており、一方で29歳以下の割合は全体の11.7%にとどまるなど、高齢化が進行していることがわかります。さらに10年後には、現在現役で働いている高齢の技能労働者の大半が引退するため、将来的にいかに労働力を確保するか、どのように技術を継承するのか等が喫緊の課題になっています。

また、2024年4月1日に建設業にも適用された「働き方改革関連法」により、時間外労働時間に上限が設けられ、原則として1ヵ月当たり45時間、年間で360時間を超えて稼働することができなくなりました(災害時などの緊急対応などを除く)。従って、これからの土木業界には、適正な労働環境を担保しつつ、DXの推進や新技術の導入等によって、これまでと同等以上の労働生産性を発揮することが求められています。

土木業界の今後と対策

老朽化したインフラの維持・修繕や土木業界が抱える課題を解決し、今後も持続的な成長を図るためには、担い手の確保やDX推進による業務効率化などの改革を土木業界全体で推進することが必要です。
土木業界の今後の成長のカギとなる対策について、人材確保と人材育成、DXの観点から詳しくみていきましょう。

人材確保と人材育成

今後も持続可能な事業を実現するためには、担い手の確保が必要です。これまで、若者を遠ざけてきた土木業界のいわゆる“3K(「きつい」「汚い」「危険」)”のネガティブイメージを払拭し、働きやすく、やりがいのある労働環境を整備することで、若者の入職を促進することが求められます。具体的な施策として、建設業界では、働き方改革関連法に基づく労働環境の改善、年次休暇の取得促進による働きやすい環境づくりに取り組んでいます。

また、処遇に関しては、CCUS(建設キャリアアップシステム)を活用した処遇の適正化が推進されています。CCUSは、国土交通省が「建設業働き方改革加速化プログラム(2018年)」で提唱し、2020年から建設業界で導入している制度です。技能労働者は個人IDが付与されたCCUSカードを常に現場に携帯し、“いつ、どの現場に、どの職種で、どの立場(職長など)で働いたのか”を就業履歴として電子的に記録・蓄積し、資格や講習の受講履歴などの情報を合わせて登録することで、業界横断的に個人のスキルや経験を見える化し、共有することができます。これにより、例えば年齢が若くても働きぶりの優秀な者やスキルを持つ者に対しては、手当を支給するなど、柔軟かつ適切な処遇改善が可能になります。この制度を活用することで、技能労働者がやりがいを感じられる環境が整備され、優秀な人材の確保へつながることが期待できます。

人材育成に関しては、技能労働者のスキルアップおよびキャリア形成、資格取得の支援制度の活用により、能力と向上心のある若者人材を確保する取り組みが推進されています。日本建設業連合会(日建連)では、技能労働者が積極的にキャリアアップ・スキルアップに挑戦できる土壌を築き、将来を担う優秀な人材を確保するため、中学校や高等学校、専門学校や大学などの在学中に、左官技能士やとび技能士、高所作業車運転技能、電気工事士など、技能や資格を取得した者を対象に、資格取得費用の一部をキャッシュバックする「建設スキルアップサポート制度」を導入するなどの取り組みを実施しています。

土木業界の各事業者は、CCUSや建設スキルアップサポート制度などを最大限に活用し、将来の担い手を確保しつつ、人材育成に努めることが求められています。

DX推進による業務効率化

土木業界においても積極的にDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、業務のスリム化による生産性向上の取り組みが求められます。
主な取り組みとして、国土交通省が推進するi-Construction(アイ・コンストラクション)が挙げられます。i-Constructionとは、建設現場における調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までの全プロセスにICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用する取り組みです。

具体的には、

  • BIM(Building Information Modeling)の活用による3Dデータ管理・シミュレーション
  • クラウドサービスによる情報管理とIoT機器とのリンク
  • ICT (情報通信技術)建機の導入

などの活用が進められています。

近年では、BIM の3DモデルにAR(Augmented Reality)やVR(Virtual Reality)を融合させた“デジタルツイン”などの最新鋭のシミュレーション技術を活用し、全工程を見える化し、リアルタイムで情報共有することで、さらなる業務効率や精度向上を図る取り組みが始まっています。
さらにクラウドサービスを活用した情報共有の円滑化や業務のオンライン化や、ICT建機との協調によって現場の負担を軽減し、担い手不足に対応する取り組みも普及しています。

これからの土木業界は、人材の確保に加え、DXによる業務効率化を図ることで、これまで以上の生産性を発揮することが期待されます。

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