アナログ業務が主流だった建設業においても、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と共にクラウドの活用が普及しつつあります。そこで建設業におけるクラウドサービスの位置づけや、活用することで得られるメリットと利用上の注意点、さらにはクラウドサービスを選択する基準まで、建設業におけるクラウドについてわかりやすく解説します。
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目次
建設業におけるクラウドとは、建設業務に特化した管理システムやコミュニケーションツールをインターネット経由で提供する、「クラウドサービス」を指しています。これまでの建設業界では紙の書類やパソコン内に保存されたデータを利用することが多く、業務の効率化や迅速な情報共有が課題となっていました。
場所や時間を選ばないクラウドを活用すれば、さまざまな管理の効率化とリアルタイムでの情報共有が可能になり、人手不足の解消とコストの削減、生産性の向上に大きな成果をもたらすことができます。建設業向けのクラウドには以下のようなサービスがあります。
作業予定と実績の管理、重機や車両の入退場管理、現場配置図の作成と共有、安全巡視やKY活動の記録など、現場の管理項目ごとに書類の作成と関係者間での共有が可能です。プロジェクトの進捗管理とコミュニケーション機能を備えた基本的なサービスです。
作業員の入退場管理をカードリーダーやカメラを使用して自動化するシステムです。面倒な出面管理を自動化して精算業務を効率化し、国籍や所属会社など作業員の属性分析にも利用できます。CCUSとの連携も可能で、体温測定機能を使えば作業員の体調把握にも利用できます。
現場ごとに登録された協力会社や作業員の情報をデータベース化し、労務安全書類(グリーンファイル)の作成をサポートします。元請・協力会社間での書類の取り交わしをクラウド経由で行うため、提出や確認作業をペーパーレス化、リアルタイム化することができます。
原価管理システムでは、当初予算と実績の比較管理、買掛残高の推移と仕入れ台帳の一元管理、売掛残高から請求書を自動生成、入金までを一括して管理できます。また、工事ごとの収支見込みを工種や注番、業者ごとに分析する機能を搭載したサービスもあります。
建設業では、クラウドを活用することで業務が効率化され、業務時間の短縮、人手不足の解消、コストの削減といった多くのメリットを得られます。
現場では非常に多くの書類が必要とされるため、紙ベースでは保管場所の確保や書類の整理、仕分け作業が大きな負担となります。また、建設業法では多くの書類に3年~10年の長期保管を義務付けており、膨大な量の書類を貸し倉庫などで保管する必要があります。さらに、近年では電子帳簿保存法により紙の帳票はスキャンデータ化しなければならず、作業の手間が効率化の妨げとなっています。
書類の作成から保管までをクラウド上で行えば、作業の手間や保管場所の確保が不要となり、倉庫や書庫から必要書類を探し出す手間も大幅に軽減されます。また、紙と違って傷んだり紛失したりすることもなく、長期間の保管も安心です。
施工管理の仕事は文字通り現場の管理ですが、それ以上に多いのが書類作成などのデスクワークです。忙しい現場仕事の合間を縫ってオフィスで図面や書類を確認し、定時後の報告書作成による時間外労働が常態化していました。
クラウドを活用すれば、現場から図面や書類を確認でき、手が空いた時にいつでも報告書や書類の作成が可能です。また、一つのファイルを複数人で修正・編集する分散作業機能によって施工管理業務の効率化をサポートします。
クラウドの特長のひとつに、複数の関係者が同時にデータアクセスできるリアルタイム性があります。現場事務所、本社や支店、自宅などのテレワーク先など離れた場所にいても、データをアップロードすれば即座に全員で共有することが可能です。
そのため従来は、出来形の立会検査や工程の進捗、資材の確認など、現場に足を運ばないとできなかった業務もクラウドを活用すれば遠隔地から行うことが可能です。また、遠隔臨場であれば立会を進めながら同時進行で報告書を作成することもできるなど、業務時間を大幅に短縮し、労働生産性の向上につながります。
クラウドサービスは初期費用がほとんどかからず、運用コストも自社でシステムを構築する場合よりも安価に運用することができます。ただし、汎用的なシステムなのでユーザーがクラウドの特性に合わせて利用することが求められます。以下に、クラウドを利用する際の3つの注意点を挙げておきます。
クラウドで行う業務を決めて、取り扱う情報や運用上のルール、クラウド化しない業務との切り分けなどを事前に明確化しておきましょう。
入力内容やデータの利活用については営業部や工事部に担当者を置き、運用や操作などシステム全般とサービス事業者の窓口は情報システム部に責任者を配置する、など社内に管理者を配置しましょう。
現場で使い方がわからない、エラーが発生したなどトラブル発生時のサポート体制は必ず確認しておきましょう。急を要する場合の連絡方法や対応にかかる費用も要確認です。
建設業でクラウドを選ぶ際には、操作性=社員や作業者が日常業務で使いこなせるかどうか、機能性=クラウドを使用する社員や現場で必要とする機能が過不足なく網羅されているかどうか、安全性=セキュリティ対策が万全かどうかといった基準を設けて選ぶことが大切です。
クラウド上で作業を行う職員にはコンピュータやソフトウェアの扱いに慣れた人もいれば、画面操作が苦手という人もおり、いわゆるITリテラシーは人それぞれです。また、スマートフォンやタブレットを使用する場合もあるので、「操作画面の使いやすさ」は非常に重要な選択基準です。「使いやすい画面」の要素として以下の点が挙げられます。
クラウドを選ぶ際には、必ずデモ版などで操作性と使い勝手を確認しておきましょう。
クラウドサービスはデスクワークだけではなく、作業をする場所、職種や立場を問わず、いつどこからでも行えることが大きなメリットです。
例えば、安全管理なら安全書類の作成や一元管理だけでなく、協力会社や作業者情報も合わせて管理したり、元請や上位下請会社だけで使用したりする機能も必要とされます。また、作業予定や実績を管理するのであれば、多職種間での情報共有や予定の変更・修正をリアルタイムで周知する機能も必要とされます。
クラウドを選ぶ際には、安易に妥協せず必要な機能がすべて網羅されたサービスを選ぶことが大切です。
いつどこからでもログインできて作業を始められるのがクラウドの大きなメリットですが、逆に、いつどこからでもアクセスできてしまうことはセキュリティリスクにつながります。クラウドサービスの具体的なセキュリティ対策を事前に確認し、個人情報保護に関する契約内容や適用される法令なども確認しておきましょう。サービス事業者がISO/IEC27001やISO/IEC27017などのセキュリティ認証を取得しているかどうかもクラウドを選ぶ際の重要な基準です。
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