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事故事例やその対策とは

建設現場での事故で最も多い墜落、転落事故。転落事故は死に至る可能性が高い危険なものです。厚生労働省の資料によると、令和3年に建設業で発生した死亡事故のうち、およそ4割が墜落・転落によるものでした。建築現場での転落事故はどこで、どのようにして起こるのでしょうか。今回は、建設現場における転落事故の発生場所や実際の事例、事故を防止するための対策について解説します。

この記事はこんな読者におすすめ

  • 建設現場の転落事故について詳しく知りたい
  • 建設現場における転落事故の事例を知りたい
  • 建設現場における転落事故の対策を知りたい
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1. 建設現場の死亡事故に占める転落事故の割合

建設現場では不安定な高所での作業が多く、さまざまな事故が発生しやすい環境にあります。厚生労働省が発表した『令和3年の労働災害発生状況』のうち「死亡災害の業種別内訳」をみると、死亡者数867人のうち建設業の死亡者数は288人となっており、全体の33%をも占めています。また、「建設業の死亡災害の内訳」を見ると、死亡者数288人のうち110人が「墜落・転落」によるもので38%を占めており、「崩壊・倒壊」が31人(11%)、「はさまれ・巻き込まれ」が27人(9%)と続いています。

令和3年の建設業で発生した休業4日以上の死傷災害は、16,079人と前年に比べて1,102人増加しています。うち、墜落・転落事故は4,869人と前年より113人増です。
厚生労働省では、平成29年4月から「第13次労働災害防止計画」を策定しています。これは令和4年までの5年間、労働災害を減少させるために国が重点的に取り組む事項を定めたものです。令和4年には死亡者数の15%以上減少させることを目標とするなど、、より一層の安全対策が求められています。

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2. 転落事故の発生場所の割合

建設現場における死亡事故の多くが墜落・転落事故によるものです。では、実際にどのような場所で事故が発生するのでしょうか。同じく厚生労働省の「死亡災害発生状況の推移」から具体的にみていきましょう。
建設業の墜落・転落による死亡事故の発生場所の割合について、令和元〜3年に発生した死亡事故315件のうち「屋根・屋上等の端・開口部から」が107件で33.4%を占めています。続いて、足場に関連する事故は56件で17.5%です。この内訳は、通常作業中は39件(うち一側足場6件)、組み立て・解体中の事故は17件となっています。はり・けたなどからの転落は16件(5.1%)です。

さらに、「令和元年~令和3年の建設業における墜落・転落災害(死亡災害)の分析結果」によると、「屋根・屋上・床上から(作業床あり)」の墜落・転落事故では、木造住宅などの屋根の端からの落下が24件、倉庫・工場などのスレート屋根の踏み抜きが35件、ビルや住宅の開口部からの落下が20件、屋上等の端からの落下が10件となっています。

そのほか、設置されている足場、あるいは組み立て・解体中の足場(本場足・一側足場・つり足場など)からの落下、建方作業や解体作業中にはり・けた等の上からの落下もあります。はしごや脚立からのほか、鉄塔上や橋梁の欄干上などからの落下もみられます。

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3. 建設現場の転落事故の事例

建設現場の転落事故はどのようなシチュエーションで起こるものなのでしょうか。実際に発生した事故の事例を紹介します。

事例1:解体工事現場で墜落

解体工事現場において、廃材を高さ9メートルの3階床面から1階に押し落としていたところ、廃材とともに3階から1階に墜落した。

事例2:屋根瓦の漆喰の塗り替え作業中に転落

屋根瓦の漆喰を塗り替える工事作業中、屋根に置いてあったものを取ろうと手すりに乗ったのか、高さ5メートルの足場から転落したものと推測される。

事例3:作業床が外されていた箇所から墜落

外周足場4層目(地上高さ7.33m)で作業中、足場の階段開口部付近から階段外側に設置されていた手すりを越えて、地上まで墜落した。階段開口部に手すり等はなかった。

事例4:手すりと作業床の隙間から墜落

足場の手すりに寄りかかって座り込んだが、手すりと作業床の隙間から後ろ向きに墜落した。

事例5:組立作業中に墜落

作業状況の確認のため足場上を移動中、組み立て作業中の足場の作業床未設置の開口部から墜落した。開口部を見落とした可能性がある。

事例6:解体作業中に墜落

枠組足場を解体中、移動式クレーンを用いて5本の単管パイプを荷揚げしていたところ、単管パイプが荷崩れして落下。単管パイプに当たったかは不明だが、枠組足場上にいた作業員も約20m下に墜落した。

事例7:組立作業中に墜落

高さ18mの足場のステージを組み立て作業中、ステージ端部で固定されていなかった足場板の上で天秤状態になり、地上へ墜落した。

事例8:間柱の取り付け作業中に墜落

高さ1.9mの足場上で、木造平屋の建物の壁の下地となる間柱の取付け作業を行っていたところ土間に墜落した。保護帽、安全帯は着用していなかった。

出典:厚生労働省『令和3年における死亡災害事例』および『本足場からの墜落・転落事例

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4. 建設現場の転落事故の対策

建設現場での転落事故を防ぐためには、現場に即した安全対策を講じることが重要です。

手すりの設置

開口部や転落のおそれのある箇所には、手すりや囲いなどを設置します。開口部は照明を明るくし、付近には物を置かないようにしましょう。
足場を組み立てる時、最上層の作業床に手すりを先行して設置し、解体する時には最上層の作業床を取り除くまで手すりを残す(常時手すりがある状態にする)、「手すり先行工法」の徹底が望ましいといえます。また、足場の全層に二段手すりと幅木を設置することで、作業員の転落を防ぐ効果が期待できます。
手すりが先行設置されていない作業床がある場合や、手すりが取りはずされた作業床があれば、そのことを作業員に周知するように徹底します。手すりを先行して設置できない箇所では作業員に安全帯を装着させ、安全帯を建枠や親綱に確実に取りつけるようにしましょう。

安全ネット

足場上での作業中は、作業員や道具や工具、材料の落下を防ぐために、安全ネットを設置するようにします。また、スレート屋根の踏み抜きによる事故を防止するために、屋根上にも安全ネットを敷きます。安全ネットにほつれやたるみ、損傷がないか、下に障害物はないか十分に点検するようにします。

墜落制止用器具(安全帯)の活用

高所作業を行う際に、作業員を墜落から防止するための保護具である墜落制止用器具(安全帯)を使用しましょう。事業者は高さが2m以上の高所作業において、作業床を設置して囲いや手すりなどを設けることが困難な場合には、作業員に墜落制止用器具(安全帯)を使用させなければなりません。
墜落制止用器具には、フルハーネス型(肩・腰部・腿など身体の複数箇所をベルトで固定)と胴ベルト型(腰部をベルトで固定)の2種類があります。墜落制止用器具の選定については、衝撃荷重が分散できて身体に加わる負荷が軽減しやすいフルハーネス型を原則とします。墜落時にフルハーネス型の着用者が、地面に到達するおそれのある場合の対応として胴ベルト型の使用が認められています。

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