建設業に従事する方は、現場ごとに異なる事業者の下で働いていることが多いため、その経験の積み重ねや技能が客観的に評価されにくく、処遇に反映されにくい構造となっています。そこで、国土交通省は、建設技能者の経験や技能を蓄積し、スキルアップと処遇の改善につなげるための「建設キャリアアップシステム:CCUS」を構築しました。建設技能者は、CCUSに登録し、レベル判定を受け、スキルアップをすることで、処遇の改善につなげることができるようになり、建設事業者にとっても優秀な人材を見える化することで、建設業界が健全に維持されるようになります。ここでは、CCUSの能力評価制度や、レベル判定のための評価基準、能力評価の申請方法について詳しく紹介します。
この記事はこんな読者におすすめ
- CCUSの能力評価制度について知りたい。
- CCUSの技能レベルを評価する評価基準が知りたい
- 建設技能者の能力評価の申請手続きが知りたい
セミナー情報
建設キャリアアップのイマがわかる!CCUSの全貌解説セミナー
2023年度から公共工事において原則化された建設キャリアアップシステム、通称CCUS。 本セミナーではCCUSの概要や登録状況をはじめ、技能者や事業者にとってど...
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目次
1. 能力評価制度とは
CCUSの能力評価制度とは、CCUS(Construction Career Up System:建設キャリアアップシステム)に登録されるすべての建設技能者が積み重ねてきた経験や技能を、職種を横断して評価する制度です。能力評価制度について、評価を受けるメリットやレベルの段階などについて詳しく説明していきましょう。
能力評価制度のメリット
建設技能者にとって能力評価制度の最大のメリットは、経験や技能を客観的に評価されることで、適切な処遇に反映されることです。CCUSに登録して能力評価を受けた建設技能者は、全建設技能者よりも平均賃金が高いことがわかっています。また、CCUSに未登録の建設技能者より、賃上げが進みやすいといわれています。それは、建設業界において、CCUSの能力評価レベルを反映させた手当などを支給する取り組みが進んでいるからです。
能力評価制度の技能レベル
能力評価制度の技能レベルには、1〜4の4段階があります。CCUSに登録すると建設キャリアアップカードが発行され、現場に入場する際にカードリーダーにかざし読み取らせることで、就業日数がカウントされる仕組みです。技能レベルごとの立場と技能レベルに合わせて発行されるカード(建設キャリアアップカード)の色は以下のとおりです。
●技能レベル別の立場と発行されるカードの色
技能レベル |
立場 |
カードの色 |
レベル1 |
初級技能者(見習い) |
白 |
レベル2 |
中堅技能者(一人前) |
青 |
レベル3 |
職長レベル(職長として現場に従事できる技能者) |
銀 |
レベル4 |
高度マネジメントレベル |
金 |
能力評価判定の現状
CCUSに登録している建設技能者は、令和5年7月末時点で約124万人で、年々増加しています。そのうち、能力評価の判定を受けてレベル2以上を取得している件数は、令和5年8月31日現在で次のとおりです。
技能レベル | 判定件数 |
レベル2 | 16,512 |
レベル3 | 16,480 |
レベル4 | 49,171 |
合計 | 82,163 |
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2. CCUSの評価基準とは
CCUSの評価基準とは、建設技能者の能力を評価するための基準で、職種別に専門工事業団体などの能力評価実施団体が策定し、国土交通大臣が認定します。能力評価の対象となる職種、評価するための要素、能力評価のレベルについて説明します。
能力評価の対象となる職種
評価基準は職種ごとに異なります。令和5年9月時点で、次の41職種の能力評価基準が策定されています。能力評価の対象となる職種は、今後も拡大される予定です。
●能力評価基準が策定されている職種
電気工事 | 橋梁 | 造園 | コンクリート圧送 | 防水施工 |
トンネル | 建設塗装 | 左官 | 機械土工 | 海上起重 |
PC* | 鉄筋 | 圧接 | 型枠 | 配管 |
とび | 切断穿孔 | 内装仕上 | サッシ・CW** | エクステリア |
建築板金 | 外壁仕上 | ダクト | 保温保冷 | グラウト |
冷凍空調 | 運動施設 | 基礎ぐい工事 | タイル張り | 道路標識・路面標示 |
消防施設 | 建築大工 | 硝子工事 | ALC | 土工 |
ウレタン断熱 | 発破・破砕 | 建築測量 | 圧入 | さく井 |
解体 |
* PC=プレストレストコンクリート
** サッシ・CW=カーテンウォール
評価のための3つの要素
評価基準は、経験、知識・技能、マネジメント能力の3つの要素で構成されています。
経験とは、CCUSに蓄積された就業日数のことで、週休2日推進における工期設定の運用から、1年を215日としています。
知識・技能とは、CCUSに登録された保有資格のことで、講習、研修、表彰などで、国の資格制度の活用も含みます。
マネジメント能力とは、CCUSに蓄積・登録することのできる職長・班長などの立場としての就業日数です。
就業日数については、いずれも令和6年3月までは、CCUSに登録されていない就業日数もカウントすることができますが、勤務先から経歴書を交付してもらう必要があります。
技能レベルごとの基準
評価基準には、技能レベルごとに必要な就業日数(経験)、保有資格(知識・技能)、職長・班長としての就業日数(マネジメント能力)が、定められており、職種ごとに異なります。各技能レベルの評価基準は以下のとおりです。
技能レベル | 評価基準 |
レベル1 | CCUS に技能者登録し、かつ、レベル判定を受けていない |
レベル2 | ・就業日数 ・中堅技能者として必要な資格 |
レベル3 | ・就業日数 ・技能検定のある職種では、1級技能士又は単一等級の技能士の資格。 技能検定のない職種では、国家資格や民間資格を活用 ・職長・班長としての就業日数 |
レベル4 | ・就業日数 ・登録基幹技能者、高度なマネジメント能力を有する技能者等の資格 ・職長・班長としての就業日数は3年以上 |
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3. CCUSのレベル判定の申請方法
CCUSのレベル判定の基本的な申請方法について説明します。
申請者
レベル判定の申請は、能力評価を受けようとする建設技能者本人がおこないます。事前に、申請者はCCUSに技能者登録をしておく必要があります。
ただし、建設技能者が所属する事業者や、上位下請事業者または元請事業者が、技能者の同意を得て、代行して申請することもできます。代行して申請する所属事業者なども、CCUSに事業者登録している必要があります。
申請先は「能力評価実施団体」
能力評価を受けようとする職種の「能力評価実施団体」に申請します。他の団体に委託している場合もあるため、職種ごとの申請先を必ず確認する必要があります。申請時に必要な書類は次のとおりです。
① CCUS技能者登録画面の写し
② 能力評価申請書兼キャリアアップカード交付申請書
③ 手数料の振込明細(※振込時の領収書などを添付)
④ 経歴証明書など(CCUS利用開始前の経験の評価を求める場合に必要)
⑤ 個人情報利用に関する同意書
評価手数料は「能力評価制度推進協議会」に振込み
申請に先立って評価手数料を、「能力評価制度推進協議会」宛の口座に振り込みます。振込先は、申請先の能力評価実施団体ではないので注意が必要です。評価手数料は、4,000円または各能力評価実施団体が定める金額のため、必ず確認してください。
結果の通知とカードの送付
能力評価実施団体にて能力評価審査を実施した結果、能力評価制度推進協議会から「能力評価(レベル判定)結果通知書」が申請者に送付されます。また、判定結果を反映した技能レベルのカードが、CCUSから発行されます。
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