現場の働き方改革の一環で施工管理サービスを採用
建築現場だけでなく土木現場でも活用が進む
建築・土木ともに高い技術力で定評のある熊谷組では、リバスタが提供する建設現場施工管理サービス「Buildee調整会議」を導入しています。1年ほどの試行を経て2019年秋頃から本格的に利用を開始、本社部門による活用支援、現場の社員たちによるノウハウ共有なども進み、2021年5月までに累計百数十の現場で活用しています。採用した現場では労働時間短縮などの効果が出ており、現場の雰囲気も変わってきています。
導入前の課題
資料の取りまとめが、長時間労働の原因に
株式会社熊谷組(以下、熊谷組)では、近年、社員の働き方に対する改善に積極的に取り組んでいます。副社長直轄でBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)プロジェクトの実施や、女性活躍や働き方改革を推進するための部署を設けるなどして、さまざまな面で業務環境を改善しています。こうした活動が評価され、2021年には経済産業省が多様な人材の能力を最大限に引き出し、経営成果に繋げている企業を選定する「新・ダイバーシティ経営企業100選」にも選ばれました。
ゼネコン業界全体の課題ともいえる長時間労働の是正も、これらのプロジェクトや部署の重要な任務の1つです。特に時間外労働が多くなりがちな現場の業務については、職長や現場監督者をはじめとする現場へのヒアリングを行うなどして働き方の実態を詳細に調査し、改善に努めてきました。
熊谷組建築事業本部建築統括部建築部品質管理室室長の半田庸晃氏は、その実態を以下のように説明しています。
「現場事務所で時間外労働が長くなりがちな背景の1つが、連絡調整です。現場では、11時半に職長を集めて会議を行うのが一般的で、その前には資料ができていなければなりません。大規模な現場だと、協力会社は50社ほどにもなり、資料を取りまとめるだけでも30分程度を要します。また毎月の集計、例えば人数など集計する出面表などにも、相当な時間がかかります。こうした作業が、時間外労働の長時間化につながっているのです」
導入の経緯
1 つの現場からスタートさせ、ルールやマニュアルを整備
熊谷組では、こうした連絡調整の負担軽減策として、システム化に取り組んできました。
「BPR プロジェクトに関連して、安全打ち合わせ簿を効率化するシステムを自社で開発しました。ところが、協力会社の皆さんへの操作説明で作業所職員の手間が掛かります。更に、当時はスマートフォン端末を持っていない方も少なくなかったことなどから、利用が拡大しませんでした」と、半田氏は振り返ります。
こうしたことから社外サービスの利用を検討。それが、リバスタの建設現場施工管理サービス「Buildee 調整会議」です。熊谷組では、リバスタの電子マニフェストサービス「e-reverse.com」を以前から利用しており、その縁で紹介を受け、検討することにしました。
「Buildee 調整会議は、自社開発システムと同じような機能を持つだけでなく、現場配置図などビジュアルも使うことが可能です。この図により、例えば今日の安全通路がどこなのかを、朝礼などの際に分かりやすく示せます。自社開発システムにこだわる理由は特になく、より良いツールがあるなら使ってみようと、2018年7月にタスクチームを発足し試行を開始しました」(半田氏)
この試行には、2018年に新設された働き方改革推進室が深く関わっています。2021年に改組され、現在では管理本部ダイバーシティ推進部働き方改革推進グループとなりました。同グループの課長、石山裕子氏は次のように説明します。
「試行は、まず土木・建築1つずつの現場からスタートし、その現場で使いながらルールやマニュアルを整備して社内イントラネット上のサイトに掲載しました。その後、少しずつ他の現場に広めていき、各支店あたり2~3現場ほどで使っています。リバスタの担当者は、導入現場の職員や協力会社への操作が円滑に進むよう、説明会を開催して、力添えしてくれました。こうした支援のおかげもあり、若手職員を中心にBuildeeを使いこなすようになっていきました。配置図で、現場の平面図に重機を配置するといった作業は、楽しそうにやっている人もいます。そういった感覚でできるのが、システムを定着させるポイントなのかもしれません」
2019年9月、この試行実績を踏まえて経営会議にはかり、試行から1年後Buildee調整会議の本格的な採用が決まりました。
「採用の理由として、支店ごとに清算できる点も大きかったですね。担当者の判断次第、各現場で自由に、現場の経費でBuildeeを採用できるようにしています」(半田氏)
導入効果
翌日の作業内容を事前に入力し、調整時間を短縮
熊谷組では、現場ごとの判断でBuildee調整会議を利用するか否かを決定できるようにしていますが、実際にはかなり多くの現場が利用し、効果が得られています。
「2021年5月時点でも建築61現場、土木21現場、全82作業所が利用中です。完了した現場も含めると、Buildeeの実績は合計150現場くらいになります。特に建築現場では調整ごとが多いのでBuildeeの利用が定着してきました。今ではこのBuildeeを気に入っている社員も多く、特に大型の建築現場ではBuildeeがないと仕事がうまく回らない、といったところです。まだBuildeeのようなシステムを使っていない作業所もありますが、利用している現場の状況から考えると、使わないのはもったいないと思います」(半田氏)
半田氏によると、打ち合わせのため職長を集めた時点で、すでにBuildee調整会議上で調整が済んでいる状態ができており、会議そのものは調整済みの内容に目を通し、確認するだけということも多いそうです。現場の社員も、Buildee調整会議について「翌日の作業内容を事前に入力してもらえることが、大幅な時間短縮につながった」と評価しています。
「現場の安全通路や火気利用予定などを表示できるBuildeeのビジュアル機能も、大型モニターに表示しておき、現場の皆様が見ています。当日の予定を朝礼で全員が再確認するのに役立っています」(半田氏)
2018年の試行開始から約3年、本格的な利用が始まってから1年半余りが経過し、熊谷組の社内ではBuildee調整会議の存在が広く浸透してきました。
「社員たちが気に入って使い方を広めてくれるようになって、最近は私たちも都度説明しなくて済むようになってきました。今では、私たちが思ってもいなかったような使い方をする例も見受けられます。特に現場配置図などは、現場それぞれ独自の工夫がありますね。各現場の事情に合わせて、この配置図に工夫を施しているのです」(石山氏)
「熊谷組では最近、土木現場向けにBuildee調整会議の帳票カスタマイズを土木事業本部にて施しました。これにより、Buildee調整会議のさらなる利用が進むと期待しています」(半田氏)
今後の展望
現場で蓄積されたデータの活用にも期待
半田氏は、Buildee調整会議による業務効率化に加え、現場で蓄積されたデータの活用も視野に入れています。
「Buildeeは現場の効率化を目的に導入したものですが、その副産物としてデータが得られるので、例えば協力会社の比較、出面、歩掛の分析などに役立つ可能性があります。CO2排出量の集計機能が新たに追加されましたが、その他にもさまざまな集計・分析機能を期待しています」
熊谷組では中期経営計画(2021~2023年度)で、社員の時間外労働を30時間以下とする目標を盛り込んでいます。
また、石山氏は、Buildeeのようなツールは、建設・土木業界全体の課題とも言える「担い手不足」の問題にも効果が期待できると言います。
「この業界は、何となくアナログなイメージがあります。Buildeeのようなツールにより、業務効率化やデータ活用などが進むことで、業界の印象も明るいものに変わってくれると期待しています。そうして、求職者が増えて若い人材が増えてくれると嬉しいですね」