元請の要望に応え「Buildee調整会議」を利用
新サービスの「Buildee入退場管理」「Buildee労務安全」は
業界内で先行して導入し現場業務を効率化
1949年(昭和24年)創業の株式会社大木組は、大手ゼネコンの協力会社として、建築工事の施工管理を行っています。現在担当する130の現場のうち、およそ30の現場にて、協力会社であれば無料で利用できる「Buildee調整会議」を使用。現場の職長が各種予定情報をいつでもスマートフォンで入力・確認でき、業務効率が上がっています。併せて利用を始めた「Buildee入退場管理」「Buildee労務安全」の普及が進めば、CCUS(建設キャリアアップシステム)との連携など、さらなる効率化が進むと期待を寄せています。
導入前の課題
職長の記憶に頼り、確実な伝達ができなかった会議情報
株式会社大木組(以下、大木組)は、大手ゼネコンの協力会社として、とび・土工工事、PC組み立て工事、揚重工事・産廃管理、グラウト注入工事などを数多く手掛けています。東京都府中市に本社、茨城県ひたちなか市に営業所を構える同社の社員は102名。二次・三次の協力会社を含めると、1200名の技能工員を動員可能としています。同社では、建設現場の安全と高い品質の確保には管理者や作業員といった「人」の成長が大切であるとし、その「人」の成長によって仕事を発展させていく循環を目指しています。
現場業務の効率化などに利用するITツールは、元請指定のツールを利用しており、約130の現場のうち鹿島建設と大林組が元請である30の現場(2021年9月現在)において、協力会社が無料で利用できる「Buildee 調整会議」「Buildee 入退場管理」「Buildee 労務安全」を活用しています。
Buildee 調整会議を使うのは、現場に常駐している職長です。朝礼と、11時30分ごろ行われる全体の調整会議に参加して情報共有のために利用しています。調整会議では、作業予定や、現場での重機の配置や立ち入り禁止区域についての情報も共有されますが、それらの情報を職長の記憶に頼っていたことが課題の一つとなっていました。
「職長は、全体の調整会議に参加してその内容を控えておいて、翌日の業務に備えます。『Buildee調整会議』がない場合は記憶に頼ってしまうので、肝心なことを忘れてしまって、ミスにつながることもありました。また、二次・三次の協力会社も現場に入って仕事をしていますので、伝達や記憶違いで『言った・言わない』の問題になることもあります」と語るのは、株式会社大木組 代表取締役社長 大木 康全氏です。
現場の職長は、自身の担当業務の作業報告もしなければなりません。現場のパトロールや災害対応の仕事を13年ほど担当している、工事本部 工事管理部 安全グループ グループ長の小林 立 氏は、「足場作りの作業など、数日間同じような業務が続く場合でも、その都度同じ内容を記入しなければならず、事務作業の手間がかかります。報告は弊社が依頼している二次・三次の協力会社も行います。中には社長さんが現場に出て、そして作業が終わって一日の疲れが溜まっているときに作業報告書作成をしなければならないという問題があります」と、作業報告書作りの課題を話しました。
現場のセキュリティ面や安全面を強化する入退場管理については、元請のゼネコン側で顔写真登録による認証と検温を同時に行う、リバスタの「BANKEN シリーズ」のような顔認証ツールの導入が進んでいるものの、完全にはデジタル化への移行はなされていないのが実情です。大木氏は「今は過渡期で、顔認証と紙の書類への記帳が併用されています。デジタルツールに登録した作業員でないと作業ができないとなると、仕事にならない場合もあるからです」と話します。
労務安全書類の作成や、作業員の登録追加などの業務を行っている工事本部 工事管理部 安全グループ 相笠 敏秋 氏は自身の業務を次のように述べます。
「現在のところ、二次・三次の協力会社のうち300名から400名ほどをBuildeeに登録しています。まず登録しておいて、現場へ行ったときに作業員名簿の作成を行います」
デジタルツールの導入によってさまざまな課題が解決しますが、デジタルツール利用者の習熟度の向上も喫緊の課題となっています。大木氏は「下請けは50社ほどありますが、業務用のメールアドレスを持っていない、パソコンも触ったことがない、といった方がいまだにいるのが協力会社側の実情です。こうしたデジタルツールを活用するにあたっての業務環境の改善や利用者側のデジタルリテラシー向上などを実現できれば、建設業界全体の効率化も図れるでしょう」とデジタルツールの可能性に大きな期待を寄せます。
導入効果
スマホでの操作で効率化・省力化を実現
「Buildee 調整会議」の利用を開始して、いくつかの課題が解消されてきました。
小林氏は、「スマートフォンで操作できるのは非常にありがたいと、現場の職長から聞いています。重機の配置や立ち入り禁止の区域もすぐに確認でき、クレーンを借りるときや、何か質問があるときはすぐに元請の担当社員の方に確認できます。同じ作業の報告なら過去の履歴を参照して、コピー・編集して記載できるのですごく楽です」と、業務の効率化・省力化の効果について説明しました。
大木氏が課題として挙げていた、個人の記憶に頼った現場管理や情報の伝達ミスも防げるようになり、工事現場の安全や、工事の品質向上に役立っています。パソコンを使ったことがない人でも、スマートフォンを使って利用できるBuildee 調整会議は、使いやすさという面で大きなメリットになっています。
Buildee 入退場管理は、元請の導入状況に依存するものの、顔認証と検温を同時に行う電子化が進んでいます。Buildee 労務安全についても同様に浸透しはじめており、いずれもCCUSとデータ連携ができるのでBuildeeの利用が徐々に業界内で浸透していけば、大きなメリットを享受できるのではと期待されています。
相笠氏は「安全書類を作成することのできるBuildee 労務安全において、協力会社にとってのメリットは、Buildee 調整会議と同じような使い勝手で、労務安全サービスを無料で利用できることです。Buildeeを利用する作業員の方々が操作方法に慣れていけば、Buildee 労務安全の普及・拡大も見込めるでしょう」と話します。
今後の展望
業態にあわせた機能改善に期待
「Buildee調整会議」の利便性を感じている大木組ですが、一方で大きな現場になると複数の作業現場に作業員が分散し、職長だけでは把握できない場合も多いと話します。
大木氏は、「例えば、内装業などであれば作業するフロアは決まっていますが、弊社での例を挙げると、地下1階に10人、16階に10人、30階に10人と分散するケースがあります。その場合、職長と現場作業員のあいだに班長を置きます。職長が細かなところまではケアできないからです。ですから班長たちと情報共有をする際には権限付与ができたりするとより便利に利用できそうだと感じています」と説明します。さらに、大木氏は今後のBuildeeの機能強化について「『Buildee調整会議』に記録する作業報告から工数を集計し、請求情報と連携できるようなデータ連携機能があるとさらに便利になるかもしれません」と、今後のBuildee調整会議への期待を寄せます。
日々、現場のパトロールをしている小林氏は、「せっかくスマートフォンで利用できるので、Buildee調整会議の巡回記録機能で問題箇所の写真を共有すれば元請にもメリットがあると思います。指導事項のフィードバック機能も今後は使っていきたいですね」とさらなる業務効率化に期待を寄せました。
各種登録画面を操作する相笠氏からは「登録画面が複数に分かれているので、次に何をしたら良いか分からず負担になっている人も多いと思います。1つの画面にまとめていただいた方が良いと思います」と、インターフェース改善の要望がありました。
最後に大木氏は、Buildeeシリーズのようなデジタルツールの活用方針について次のようにコメントしました。「メリットがあるから使うというのも重要ですが、大切なのは『安全のためにツールを導入する』ということです。そのためにも、よりユーザーが操作をしやすいサービスをつくってもらい、二次・三次の協力会社の方々にもBuildeeの良さを分かってもらうことで、業務の効率化とともにいっそうの安全性確保に努めたいと考えています」