技術部門による現場への後方支援もあって円滑に展開
現場の社員の業務を効率化し、時短効果を実感
佐藤工業の土木部門では、いくつかの現場で試行した上で、2022年7月からBuildeeサービスの全面的な導入を進めてきました。さらにその後、一部の現場では入退場管理機器BANKEN FACEも導入しております。同社の技術部門である技術センターによる現場へのサポートもあってBuildeeの展開が円滑に進み、現場で働く社員は業務効率化などの効果を実感しています。
導入前の課題
安全書類の確認や協力会社とのやり取りなど
現場の事務負担が大きな課題
佐藤工業は、幕末1862年(文久2年)に現在の富山県で創業、1931年(昭和6年)に株式会社へと改組し、一世紀半を超える歴史を持つ総合建設会社です。トンネル工事を得意とし、鉄道や道路、利水・治水事業、エネルギー関連などのほか、学校、医療・福祉、庁舎、アリーナ建設など大規模プロジェクトにも数多く携わっています。
2019年には、生産性向上と競争力強化をめざし、土木・建築一体の組織として技術センターを設置、ハードとソフトの両面のアプローチで、技術の先端化と合理化の追求を進めています。さらに、技術センターの施設として、自社で建築した「技術センターSOU」を2022年に開設。数々の技術を注ぎ込んで環境負荷を大幅に低減したオフィスや、高度な実験を行える多彩な設備、トンネルの施工や更新技術を開発するためのテストフィールドなどを備え、さらなる技術革新に取り組んでいます。
この技術センターの業務領域は、土木・建築技術のみならず、ICT分野の技術、例えば現場事務所における事務作業の負担軽減などにも関係するといった幅広いものです。その取り組みについて、技術センター 生産推進部 土木生産推進課の小澤周平氏は、次のように説明しています。
「近年取り組んできたテーマの1つが、2024年問題に向けた現場の業務効率化、労働時間削減です。そこでまず、当社職員が自らの問題として意識してもらうとともに、働き方の改善を目的とした提案を募集する技術コンテストを実施しました。そのコンテストへの提案の1つに、『安全書類の電子化』がありました」。
それまで同社は安全書類を紙で管理しており、その事務作業に時間を取られていました。大きな現場では、安全書類専任の社員を配置していたほどだったといいます。
「協力会社から提出された書類を確認し、不足の書類があれば提出を依頼し、不備があれば付箋を付けて送り返して修正してもらうなどの作業が必要でした。現場や書類の種類によっても違いはあるものの、業者の多い現場だと1~2時間ほど時間を要することもありました。安全書類の作成は現場にとって大きな負担となることから、その効率化を進めてコア業務に専念したいというのが、多くの現場に共通した認識です」と、東京支店 工事部長・現場代理人の坂口太郎氏は話します。
導入の経緯
試験導入を経てBuildeeサービスを採用
BANKEN FACEの導入も始まる
技術コンテストでの提案をきっかけに、佐藤工業の土木部門では安全書類のデジタル化に取り組むことを決定、クラウドサービスを選定して試験導入が行われました。
「試験導入の対象となったのは、全国のうち新規に着工する3つの現場です。その後、本格的に安全書類のデジタル化を進めていく方針が決まりました。技術コンテスト時は他社サービス を使用し検証しましたが、本格導入に際してはBuildeeの調整会議・労務安全・入退場管理の3サービスを選定しました。以後、新しい現場ではBuildeeを導入しています」(坂口氏)
本格導入でBuildeeを選んだのは、協力会社の費用負担が生じない点が主な理由とのことです。また、現場に余計な混乱が生じないように、既存現場の安全書類を紙からデジタルに急に切り替えることはせず、新たに着工する現場から順次導入を進めていきました。
さらに、Buildeeの展開を円滑に進めるため、技術センターから現場への支援体制も整えています。
「技術センターは、Buildeeに関して現場への後方支援を行っています。各現場でBuildeeの利用を始める際、あらかじめ初期情報の登録などを行った上で引き渡す形です。また、リバスタにも、説明会などの協力をしてもらっています。 2024年4月時点では、土木部門のほぼ全ての現場にBuildeeが導入できました」(小澤氏)
そしてBuildeeの各サービス導入・展開に続いて、現在ではBANKEN FACEの導入及びBANKENサイネージも導入し効果検証を行っています。
「CCUSのタッチ率は、土木部門では以前からかなり良好な数字で、社内目標は達成していました。一人親方のような会社もある中で 、きちんと登録している会社が多いことが理由でしょう。とはいえ、タッチ率は原則として100%をめざすべきものですから、カード忘れなどしても問題ないようにと、今回私が担当する現場では顔認証を導入しました」(坂口氏)
導入効果
安全書類の確認や修正のやり取りが
画面上で済み、格段に効率化
現時点で、3つのBuildeeサービスの導入効果として、安全書類に関する事務作業の効率化が大きいと坂口氏は言います。
「Buildee労務安全を使うことで、安全書類の確認や修正のやり取りも画面上で済むようになりました。どの書類が提出されていて、どの書類が提出されていないか、どの書類のどこに不備があるか、といったことを容易に確認できます。協力会社の多くはほかのゼネコンの現場でもBuildeeを使った経験があり、特に問題なく利用してくれています。定量的な効果は確認していませんが、各担当者がきちんと使いこなしていれば、修正のやり取りなどは紙の安全書類だった頃に比べて体感的に1/3くらいの時間で済むようになったかと思います。Buildeeの利用により、少なくとも、自分たちの若い頃と比べて短時間で済むようになりましたね」
BANKEN FACEについては、同じく定量的な評価を行っていないものの、特に問題なく運用できていると説明します。
「導入当初、協力会社がどれだけ顔写真登録してくれるかという懸念もありましたが、ほかの現場で登録済みの会社も多いようで、スムーズに利用してくれています。この顔認証機器はPCなどと組み合わせるのでなく、単体で稼働させることができるので、セットアップや日々の運用はとても楽です」(坂口氏)
加えて、坂口氏はBANKENサイネージについてもBuildeeとの連携がとても便利だと評価しています。
「Buildeeで現場配置図などを作成しておけば、そのままBANKENサイネージに連携できるので、朝礼などで手軽に使うことができます。リバスタなら、デジタルサイネージも含めトータルで導入できる点も、現場を預かる立場として助かっています」
今後の展望
帳票カスタマイズで調整会議も本格利用
今後はデータ活用も視野に
一方で、現場を後方から支える小澤氏は、リバスタの対応を評価しています。
「リバスタの技術サポートは我々の質問に対して的確に回答してくれるので、大いに助かっています。24年4月時点では帳票のカスタマイズを依頼しており、帳票カスタマイズの実装を待ってBuildee調整会議を本格的に利用する予定です。現状ではBuildee労務安全と入退場管理をメインに使っていますが、調整会議も本格的に使うことができるようになれば3つのサービス全てを活用する形になります。これにより、さらなる労働時間短縮が見込めるので、現場での負担がこれまで以上に軽減されることでしょう」
そして今後、デジタル活用をさらに推進すべく、BuildeeやBANKENの利用拡大を図っているとのことです。
「すでにBuildeeは当社土木部門の標準ツールとなっています。技術部門としては、Buildee上に登録されたデータをさまざまな形で活用し、各業務を効率化していきたいです」(小澤氏)