建設を事業として営んでいくためには、建設業許可を取得しなければなりません。しかし一口に建設業許可と言っても、その種類は複数あり、また取得の条件も細かく定められているため、正しい知識や事前の準備が必要不可欠です。ここでは、建設業許可の詳しい内容や取得のための要件、流れなどについて、詳しく解説していきます。
この記事はこんな読者におすすめ
- 建設業許可という言葉は知っているが、詳しい内容を知らない
- 建設業許可を取得したいと思っているが、取得の要件や流れを知りたい
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目次
1. 建設業許可とは
建設業許可とは、建設業を営む際に取得しておく必要がある許可のことで、建設業に関するさまざまなルールが規定された建設業法の第3条によって定められています。
この建設業許可は、基本的にはすべての建設会社に必要ですが、一部例外があり、軽微な建設工事のみを請け負う場合に許可は必要ないとされています。軽微な建設については、具体的には以下のように定められています。
- 建築一式工事以外の工事で、1件の請負代金の額が500万円未満の工事
- 建築一式工事で、請負代金の額が1,500万円未満、もしくは延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅の工事
もしも建設業許可を取得せず、さらに上記にあるような軽微な建設工事以外の内容を請け負った場合、建設業法違反として最大で「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科されます。さらに向こう5年間は新たに建設業許可を取得できなくなる可能性もあるなど、重い罰則が定められているため注意しましょう。
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2. 建設業許可の種類
一口に建設業許可と言っても、実はその内容によって細かく種類がわけられており、自身の状況に合った正しい許可を取得しなければなりません。ここでは、建設業許可の種類について解説します。
許可行政庁(大臣許可と知事許可)
建設業許可は、どこがその許可を出すのかで、まず大きく2種類に分かれます。それぞれ「大臣許可」と「知事許可」と呼ばれており、その違いは営業所がどこにあるかという点です。
- 大臣許可:2ヵ所以上の都道府県に営業所を設けている場合
- 知事許可:1つの都道府県に営業所を設けている場合
大臣許可と知事許可を区別する条件は上記のみであり、例えば全国どこでも工事をするが営業所は1つしかないというのであれば知事許可、逆に1つの都道府県でしか工事はしないが2ヵ所以上の都道府県に営業所があれば大臣許可、複数の営業所があるがすべて同じ都道府県にある場合は知事許可となります。
業種
許可行政庁の違いでわけられた建設業許可の種類は、さらに建設工事の種類に応じてさらに細分化されていきます。工事の種類として定められているのは以下の通りです。
一式工事(全2種類) | ・土木一式工事 ・建築一式工事 |
---|---|
専門工事(全27種類) | ・大工工事 ・左官工事 ・とび・土工工事 ・石工事 ・屋根工事 ・電気工事 ・管工事 ・タイル・れんが・ブロツク工事 ・鋼構造物工事 ・鉄筋工事 ・舗装工事 ・しゅんせつ工事 ・板金工事 ・ガラス工事 ・塗装工事 ・防水工事 ・内装仕上工事 ・機械器具設置工事 ・熱絶縁工事 ・電気通信工事 ・造園工事 ・さく井工事 ・建具工事 ・水道施設工事 ・消防施設工事 ・清掃施設工事 ・解体工事 |
建設業許可を取得する際は、自身がおこなう工事の内容に沿ったものすべてを取得する必要があり、仮に一式工事の許可を持っていたとしても、個別に左官工事や電気工事などをおこなう場合、そちらの許可も必要になるため注意しましょう。
区分(一般建設業と特定建設業)
さらに建設業許可は、工事を下請会社に依頼するかどうかによって、「一般建設業」か「特定建設業」かに分けられます。細かい条件の違いは以下の通りです。
特定建設業 | 元請会社として工事を請け負い、4500万円(建築一式工事は7000万円)分以上の工事を下請会社に依頼する場合 |
---|---|
一般建設業 | 上記以外の場合 |
ここでポイントとなるのが、「元請会社」と「下請会社に依頼する」という点です。この条件が揃っていなければ特定建設業には該当しないため、下請会社が孫請会社に4500万円以上の金額で工事を出しても下請会社が特定建設業になることはありませんし、いくら大きい金額で請け負っても元請会社自らが工事をする場合は特定建設業にはなりません。
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3. 建設業許可の要件
建設業許可を受けるためには、以下の5つの要件を満たさなければなりません。
建設業の経営業務の管理を適正におこなう能力を有する者
適切に建設業を経営するためには、建設業の経営業務に一定期間の経験を有した人が最低1人は必要とされています。その具体的な要件は以下の通りです。
要件(いずれかに該当) | 要件(いずれかに該当) | |
---|---|---|
法人 | ・常勤の役員 | 1. 建設業で5年以上の経営業務の管理責任者経験がある 2. 建設業で5年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位がある者として、経営業務管理経験がある 3. 建設業で6年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位がある者として、経営業務管理の補佐経験がある 4. 5年以上役員などの経験があり、建設業で2年以上役員などの経験がある |
個人 | ・事業主本人 ・支配人登記した支配人 |
専任技術者
営業所ごとに以下の条件を満たした専任技術者を設置する必要があります。
許可の種類 | 要件(いずれかに該当) |
---|---|
一般建設業許可 | 1. 指定学科修了者で高卒後5年以上、もしくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者 2. 指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者、または専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士、もしくは高度専門士を称する者 3. 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験を有する者 4. 国家資格者 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001447594.pdf 5. 複数業種に係る実務経験を有する者 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000085.html |
特定建設業許可 | 1. 国家資格者
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001447595.pdf 2. 一般建設業の専任技術者要件を満たしている者で、かつ、許可を受けようとする建設業に関して、発注者から直接請け負い、その請負代金の額が4,500万円以上であるものについて2年以上指導監督的な実務経験を有する者 3. 大臣特別認定者(指定建設業7業種に関して、過去に特別認定講習を受け、当該講習の効果評定に合格した者若しくは国土交通大臣が定める考査に合格した者/現在は実施されていない) |
誠実性
請負契約の締結やその履行に際し、不正や不誠実な行為をする恐れが明らかな場合は、建設業許可が受けられません。誠実性が求められるのは、建設業許可の対象となる法人や個人、役員などです。
財産的基礎等
建設工事や営業活動では、一定の準備資金が必要になります。そのため、建設業許可が必要となる規模の工事を請け負える資金力があるかが確認されます。その具体的な内容は以下の通りです。
許可の種類 | 要件 |
---|---|
一般建設業 | 1. 自己資本が500万円以上 2. 500万円以上の資金調達能力がある 3. 許可申請直前の過去5年間許可を受けて、継続して営業した実績がある ※1,2,3のいずれかに該当 |
特定建設業 | 1. 欠損の額が資本金の20%を超えていない 2. 流動比率が75%以上 3. 資本金が2,000万円以上かつ自己資本が4,000万円以上 ※1,2,3のすべてを満たす |
欠格要件
許可申請書や添付書類に虚偽の記載があった場合や、重要な事実に関する記載が欠けている場合は建設業許可を受けられません。また、以下の条件に1つでも該当していると、許可がおこなわれなくなります。
- 破産者で復権を得ない者
- 一般建設業許可または特定建設業許可が取り消され、取り消し日から5年経過していない者
- 営業停止処分の期間が経過していない者
- 禁固刑以上の刑に処せられ、執行が終わってから5年経過していない者
- 精神機能の障害により適切な認知や判断、意思疎通ができない者
- 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年経過していない者
など
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4. 建設業許可の申請の流れ
ここからは、建設業許可を申請する際の流れについて紹介します。
要件の確認
前章で紹介した5つの要件について、全て満たしているかを確認します。要件は細かく設定されていますが、一つでも満たせていないと建設業許可の登録ができないためご注意ください。
許可申請書と添付書類の作成
許可行政庁に提出する許可申請書と添付書類を作成します。許可申請書は許可行政庁のホームページからもダウンロードできます。なお、添付書類は法人と個人で提出内容が異なるため、条件を確認して過不足なく準備しましょう。
参考:【許可申請に必要となる書類の一覧】〈令和3年1月1日より適用〉
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001483357.pdf
予備審査と申請書の提出
許可行政庁の建設業課の相談窓口に、許可申請書と添付書類一式を提出します。
具体的には大臣許可の場合は国土交通省の各地方整備局長へ、知事許可の場合は各都道府県知事へ提出します。都道府県ごとの問い合わせ先は国土交通省の下記ページを参照ください。
参考:許可行政庁一覧表
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000088.html
多くの許可行政庁ではその場で予備審査がおこなわれ、問題がなければ書類を正式に提出することになります。その際、手数料も納入することになります。知事許可で建設業許可を取得する場合の手数料は9万円、大臣許可の場合は15万円となっており、その他事務手数料なども必要です。
申請書類やその内容に不備がなければ、建設業許可が登録されます。登録にかかる期間は1ヶ月から3ヶ月程度ですが、混雑状況によって審査期間が長引く可能性もあります。
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5. 建建設業許可の有効期限
建設業許可の有効期限は、登録してから5年間です。有効期限満了後も引き続き登録を受けたい場合は、有効期限満了日の90日前から30日前までに、登録の更新申請をおこなう必要があります。申請すると、さらに5年間有効期限が延長されます。
なお、有効期限満了日に土日祝日は関係ないため、登録申請をおこなう許可行政庁の休業日に満了日が重なる可能性があります。また、建設業許可が失効した状態で業務を継続すると、業務改善命令や営業停止処分といった罰則の対象となってしまいます。一般的には、建設業許可の有効期限が近づいてくると、行政機関より更新のお知らせが送付されるため、余裕をもって速やかに手続きするようにしましょう。
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6. 建設業許可のよくある質問
建設業許可とは?
建設業を営む際に取得しておく必要がある許可のことです。軽微な建設工事のみを請け負う建設会社以外は、すべて許可登録する必要があります。建設業許可を取得せず業務を行った場合、罰則が科されるため注意しましょう。
建設業許可の種類には何がある?
どこの許可行政庁が建設業許可を出すかによって、大きく2種類に分かれます。2ヶ所以上の都道府県に営業所を設けている場合は「大臣許可」、1つの都道府県に営業所を設けている場合は「知事許可」です。また、全2種類の「一式工事」と全27種類の「専門工事」、一定金額以上の工事を下請けに出す「特定建設業」、それ以外の「一般建設業」といった種類にわけられます。
建設業許可を申請する流れは?
指定された要件を満たしていることを確認した上で、建設業許可申請書と添付書類を作成します。作成した書類は許可行政庁の窓口に提出し、1ヶ月から3ヶ月程度の審査期間を経て、問題がなければ許可を取得できます。
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