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ヒヤリハット報告書とは

建設現場では高所や足場の悪い場所での作業や、重量のある建材、機械を扱う場面が多く、危険と隣り合わせです。重大事故には至らなかったものの、思わず「ヒヤリ」「ハッ」とした経験は新人、ベテラン問わずあるでしょう。ヒヤリハットの情報を収集・分析して重大事故への発展を防止するために「ヒヤリハット報告書」が役立ちます。ここでは、ヒヤリハットとは何か、そしてヒヤリハット報告書の書き方のポイントを解説します。

この記事はこんな読者におすすめ

  • ヒヤリハットについて、事例を交えて詳細を知りたい
  • ヒヤリハット報告書がなぜ必要なのか、目的を知りたい
  • ヒヤリハット報告書の書き方を知りたい
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1. ヒヤリハットとは

ヒヤリハットとは、重大な事故には至らなかったものの、一歩間違えれば事故になり兼ねなかった事象のことで、思わず「ヒヤリ」「ハッ」とする場面のことをいいます。

ヒヤリハットは、人命にかかわる大事故に発展しやすい建設や製造現場のほか、医療や介護の現場で発生しやすい特徴がありますが、オフィスの中での事務職でも起こり得るものです。

ヒヤリハットの原因は、作業者の不慣れや不注意、油断、疲れ、思い込み、動揺などを要因とするヒューマンエラーのほか、マニュアル違反、機械・設備の不具合、老朽化、保護具の欠陥などさまざまです。

ヒヤリハットは、たまたま重大事故にならなかっただけであり、一歩間違えれば重大事故に繋がる可能性は十分にあります。「事故にならなくてよかった」と安心して終わりにするのではなく、その経験を教訓にして対策を講じ、労働災害の防止に繋げることが重要です。

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2. ハインリッヒの法則

ヒヤリハットを語る上で重要な法則があります。それが、「ハインリッヒの法則」です。

ハインリッヒの法則とは、1件の重大事故の背景には、29件の「軽微な事故」があり、さらに300件の「事故になる寸前の事象(ヒヤリハット)」が潜んでいることを示したもので、「1:29:300の法則」とも呼ばれています。

1930年頃、米国の損害保険会社の安全技師、ハーバード・ウィリアム・ハインリッヒにより、工場で発生した約5000件もの労働災害の調査を元に導き出された経験則で、重大事故は偶然に起こるのではなく、何らかの予兆があることを示唆しています。

重大事故を防ぐためには、ヒヤリハットの段階で対策を打つことが大切であり、日頃から些細なミスに気を配る必要性を示すこの法則は、さまざまな現場の安全対策に活用されています。

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3. 建設現場におけるヒヤリハット事例

実際に建設現場ではどのようなヒヤリハットがあるのでしょうか。厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」から、典型的と思える事例をいくつかご紹介します。

足場の組み立て中に転落しそうになった

足場の組立工事中、高さ5メートルの足場上を歩行していたところ、突然、足場板のツメが破損して傾き転落しそうになった。足場板の点検が不十分で、ツメ取付け部が劣化していることに気づかなかったことが原因だった。

波形スレート屋根から転落しそうになった

倉庫の解体工事中に、スレート屋根の上を歩行していたところ、踏み抜いて、コンクリートの床に転落しそうになった。屋根の上に歩み板が設置されておらず、作業者は安全帯を使用していなかったことが原因だった。

木材で肩を強打し、歩み板を踏み外しそうになった

2階部の工事の進捗状況を確認するため、外回りの歩み板の上を歩行中、突然飛び出した木材角柱で肩を強打し、歩み板を踏み外すところだった。安全ネットは設置されていたが、安全帯は固定されていなかった。

足場材を地上に落下させた

工事現場の足場解体で、足場材を取り外そうとしたところ、道路まで落下させてしまった。落下防止ネットの端が固定されていなかったことが原因だった。

つり荷物に作業員が激突しそうになった

クレーンで建築用の資材を地上に下ろす作業中、つり荷が旋回してしまい、玉掛け作業者にぶつかりそうになった。

背後の階段に気づかず転落しそうになった

現地事前調査のため、暗がりの中で現場の写真を撮ろうと後退したところ、後方の階段に気づかず、4段ほど転落した。歩行先の安全確認不足が原因だった。

足場上で資材の受取りの際、ふらつき墜落しそうになった

地上2.2mの足場上で、塗料缶を作業者に受け渡そうとした際、手をロープから滑らせてふらついた。墜落防止の手すりが外されていたり、足場板の前に出過ぎたことや、作業者同士の受け渡しの合図がうまく合わなかったことが原因だった。

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4. ヒヤリハット報告書の書き方

ヒヤリハットは重大事故に繋がるサインです。ヒヤリハットがどのような状況で、どのように起こったのかを把握し、原因を考えることで、再発防止に向けて対策を練らなくてはなりません。そこで役立つのが「ヒヤリハット報告書」です。

ヒヤリハット報告書とは、当事者がヒヤリハットの状況や原因を詳細に記載する文書のことです。情報を収集して分析し、安全対策や業務の改善計画を立てたり、情報を職場で共有したりすることで、重大事故を未然に防ぐことに繋がります。

「大事に至らなくてよかった。大したミスではないから報告しなくても大丈夫だろう」「上司に怒られたくないから、黙っておこう」などと自己判断し、ヒヤリハットの報告がなされないケースは少なくありません。しかし、事故防止対策を立てるために、ヒヤリハット報告書の蓄積が必要であり、積極的に報告するべきでしょう。

では、次に、ヒヤリハット報告書の書き方について説明します。

いつ、だれが、どのような状況で起こったのか

ヒヤリハット報告書のフォーマットは決まりがありませんので、各々の現場に応じたフォーマットを用意します。
報告書には、いつ、だれが、どのような状況で、どのようなヒヤリハットが発生したのかを具体的に記載します。

ヒヤリハット報告書に必要な項目

  • いつ(発生日時)
  • どこで(発生した場所)
  • だれが(当事者)
  • 何を(ヒヤリハットの具体的な内容)
  • どのような状況で(発生の経緯や原因)
  • 想定される事態(どのような事故に発展する可能性があったか)
  • どのような対策が必要か(対策・改善)

独自の用語を使わず簡潔に書く

ヒヤリハット報告書は現場の作業者にしかわからない用語や略語を使わず、誰が読んでも伝わりやすい言葉で、簡潔に書くことが大切です。主観を入れず、客観的な事実だけを正確に書くことがポイントです。

できるだけ具体的に書く

どのようなヒヤリハットがあったのか、状況が読み手に伝わるように具体的に記載します。再発を防ぐための対策についても書きましょう。また、どのような事故に発展していた可能性があるか記述することで、読み手のリスク管理意識を高める効果が期待できます。

例)

【状況】
工事現場で、キャタピラーに上って油圧ショベルに乗るために、運転台の取っ手を強く掴んだ際、手を滑らせ、キャタピラーから転落しそうになった。地面にはコンクリートの塊が多く転がっており、転落すれば大けがをするところだった。

【原因】
直前に給油作業をしたが、手袋を交換せず、重油が付着したままだった。
慣れた動作だったため、注意を払わなかった。

【対策】
給油作業をした手袋は、次の作業の前に交換すること。
油圧ショベルの昇降では、三点支持を意識した基本動作を守ること。

できるだけ速やかに報告書を書く

ヒヤリハットが発生したら、できる限り速やかに報告書を作成することが大切です。時間が経過するにつれ、記憶が曖昧になると、正確な情報を記載できなくなります。また、日々の忙しさに追われ報告書作成を忘れてしまうかもしれません。すぐに作成が難しい場合は、いつ、どこで、どのようなヒヤリハットが起こったのかをメモに残しておきましょう。

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本記事は2022年08月12日に作成されたものです。
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