建設業の許可を受けるための要件のひとつに、専任技術者の設置があります。建設業では、建設工事に関して、見積もりの作成や入札、請負契約などが適正に結ばれているか、またその契約通りに工事が遂行されているかなどは、営業所単位でおこなわれます。そのため専任技術者は、常時営業所に従事し、契約の履行の確認や現場の監理技術者をサポートします。ここでは、専任技術者の職務や、専任技術者になるための必要要件について詳しく解説します。
この記事はこんな読者におすすめ
- 専任技術者の仕事内容が知りたい
- 専任技術者に必要な資格や経験が知りたい
- 一般建設業と特定建設業における専任技術者の要件の違いが知りたい
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1.専任技術者とは
専任技術者とは、建設業法で営業所ごとに設置することが義務付けられている、建設業許可を受けるために必要な要件のひとつです。専任技術者が、例えば退職などで不在となる場合には、建設業許可を取り消される可能性があります。そのため、引き続き建設業許可を維持するには、専任技術者の不在期間がないように配置しなければなりません。
ではなぜ、営業所ごとに専任技術者をおかなければならないのでしょうか。建設業では、見積り、入札、請負契約の締結などの営業の仕事が、営業所単位でおこなわれるからです。専任技術者は営業所で、①適正な請負契約が締結されるために、技術的観点から契約内容の確認を行い、②請負契約通りに建設工事が遂行されるように、現場の監理技術者などをバックアップおよびサポートを行います。
ここで、建設業法における営業所とは、本店、支店、または常時建設工事の請負契約を締結する事務所を指します。専任技術者は、その営業所に常勤しなければなりませんが、令和3年12月に、通信機器を利用して営業所に従事している場合と同様の職務ができ、常時連絡が取れる環境であれば、テレワークによって職務に従事する場合も、専任要件として認められることになりました。
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2. 専任技術者に必要な資格と実務経験
専任技術者には、どのような資格や実務経験が必要なのでしょうか。一般建設業と特定建設業では、どちらの建設業許可を受けるかによって、専任技術者に必要な要件が異なります。それぞれの建設業に分けて、専任技術者の要件を説明していきましょう。
一般建設業の専任技術者になるための要件
一般建設業の専任技術者になるための要件は、大きく分けて3つあります。
- 一定の国家資格をもっていること
- 許可を受けようとする建設業の種類の建設工事について、指定された学科を卒業して、必要に応じた実務経験があること
- 許可を受けようとする建設業の種類の建設工事に10年以上の実務経験があること
以上について、それぞれ説明していきましょう。
1:一般建設業の専任技術者になるための国家資格をもっている
建設業の種類ごとに、専任技術者になることができる国家資格が定められています。建設業ごとの資格は以下の通りです。
一般建設業の専任技術者に必要な建設業の種類ごとの国家資格
建設業の種類 | 必要な資格 |
土木工事業 |
・建設「鋼構造及びコンクリートを含むすべて」、 |
建築工事業 |
|
大工工事業 |
|
左官工事業 |
|
とび・土工工事業 |
・建設「鋼構造及びコンクリートを含むすべて」、
|
石工事業 |
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屋根工事業 |
|
電気工事業 |
・建設「鋼構造及びコンクリートを含むすべて」、総合技術監理「建設‐鋼構造及びコンクリートを含むすべて」
|
管工事業 |
・機械「流体工学」「流体機器」「熱工学」「熱・動力エネルギー機器」、総合技術監理「「機械」(流体工学・流体機器・熱工学・熱・動力エネルギー機器)
|
タイル・れんが・ブロック工事業 |
|
鋼構造物工事業 |
|
鉄筋工事業 |
|
舗装工事業 |
|
しゅんせつ工事業 |
|
板金工事業 |
|
ガラス工事業 |
|
塗装工事業 |
|
防水工事業 |
|
内装仕上工事業 |
|
機械器具設置工事業 |
|
熱絶縁工事業 |
|
電気通信工事業 |
|
造園工事業 |
・建設「鋼構造及びコンクリートを含むすべて」、総合技術監理「建設-「鋼構造及びコンクリートを含むすべて」
|
さく井工事業 |
|
建具工事業 |
|
水道施設工事業 |
・上下水道「上水道及び工業用水道を含むすべて」、総合技術監理「上下水道-上水道及び工業用水道を含むすべて」 |
消防施設工事業 |
|
清掃施設工事業 |
|
解体工事業 |
|
出典:国土交通省:《一般建設業の許可を受けようとする場合》[3]-1国家資格者 営業所専任技術者となり得る国家資格等一覧
2:指定された学科を卒業にして、必要に応じた実務経験がある
許可を受けようとする建設業の種類の建設工事について、学歴に応じた実務経験が必要です。
ここでいう実務経験とは、許可を受けようとする建設業の種類の建設工事の施工に、直接関係するすべての経験が積算されます。ただし、実務経験の計算方法は発注者によって異なるため、注意が必要です。
専任技術者に必要な学歴別の実務経験年数は、次の通りです。
- 高校卒業および専修学校の専門課程の修了者は5年以上
- 専修学校の専門課程修了者で専門士または高度専門士取得者は3年以上
- 大学または高等専門学校卒業者は3年以上
また、許可を受けようとする建設業について、在学中に建設業ごとに定められている指定学科を修めている必要があります。建設業ごとの指定学科は、次の通りです。
建設業ごとの指定学科
許可を受けようとする建設業 | 指定学科 |
土木工事業 舗装工事業 |
土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む。以下同じ。)都市工学、衛生工学又は交通工学に関する学科 |
建築工事業 大工工事業 ガラス工事業 内装仕上工事業 |
建築学又は都市工学に関する学科 |
左官工事業 とび・土工工事業 石工事業 屋根工事業 タイル・れんが・ブロック工事業 塗装工事業 解体工事業 |
土木工学又は建築学に関する学科 |
電気工事業 |
電気工学又は電気通信工学に関する学科 |
管工事業 水道施設工事業 |
土木工学、建築学、機械工学、都市工学又は衛生工学に関する学科 |
鋼構造物工事業 鉄筋工事業 |
土木工学、建築学又は機械工学に関する学科 |
しゅんせつ工事業 | 土木工学又は機械工学に関する学科 |
板金工事業 | 建築学又は機械工学に関する学科 |
防水工事業 | 土木工学又は建築学に関する学科 |
機械器具設置工事業 消防施設工事業 |
建築学、機械工学又は電気工学に関する学科 |
熱絶縁工事業 | 土木工学、建築学又は機械工学に関する学科 |
造園工事業 | 土木工学、建築学、都市工学又は林学に関する学科 |
さく井工事業 | 土木工学、鉱山学、機械工学又は衛生工学に関する学科 |
建具工事業 | 建築学又は機械工学に関する学科 |
出典:国土交通省指定学科一覧
特定建設業の専任技術者の要件
特定建設業の専任技術者になるための要件は、大きく分けて3つあります。
①一定の国家資格をもっていること
②指導監督的経験があること
③国土交通大臣が認定した大臣認定特別者
※特定建設業のうち指定建設業7業種の専任技術者に限る
それぞれについて、説明していきましょう。
1:特定建設業の専任技術者になるための国家資格をもっている
建設業で許可を受けようとしている種類の国家資格一級または技術士の資格を持っている方は、特定建設業の専任技術者になることができます。建設業ごとの資格は以下の通りです。
特定建設業の専任技術者に必要は建設業の種類ごとの国家資格
建設業の種類 | 必要な資格 |
土木工事業 |
・建設「鋼構造及びコンクリートを含むすべて」、 |
建築工事業 |
|
大工工事業 |
|
左官工事業 |
|
とび・土工工事業 |
・建設「鋼構造及びコンクリートを含むすべて」、 |
石工事業 |
|
屋根工事業 |
|
電気工事業 |
・建設「鋼構造及びコンクリートを含むすべて」、総合技術監理「建設‐「鋼構造及びコンクリートを含むすべて」 |
管工事業 |
・機械「流体工学」「流体機器」「熱工学」「熱・動力エネルギー機器」、総合技術監理「「機械」(流体工学・流体機器・熱工学・熱・動力エネルギー機器) |
タイル・れんが・ブロック工事業 |
|
鋼構造物工事業 |
|
鉄筋工事業 |
|
舗装工事業 |
|
しゅんせつ工事業 |
・建設「鋼構造及びコンクリートを含むすべて」、総合技術監理「建設-鋼構造及びコンクリートを含むすべて」 |
板金工事業 |
|
ガラス工事業 |
|
塗装工事業 |
|
防水工事業 |
|
内装仕上工事業 |
|
機械器具設置工事業 |
|
熱絶縁工事業 |
|
電気通信工事業 |
|
造園工事業 |
・建設「鋼構造及びコンクリートを含むすべて」、総合技術監理「建設-鋼構造及びコンクリートを含むすべて」 |
さく井工事業 |
|
建具工事業 |
|
水道施設工事業 |
・上下水道「上水道及び工業用水道を含むすべて」、総合技術監理「上下水道-上水道及び工業用水道を含むすべて」 |
消防施設工事業 | (該当資格なし) |
清掃施設工事業 |
・衛生工学「廃棄物管理」「廃棄物・資源循環」、総合技術監「衛生工学‐廃棄物管理」「衛生工学-廃棄物・資源循環」 |
解体工事業 |
・建設「鋼構造及びコンクリートを含むすべて」、総合技術監理「建設-「鋼構造及びコンクリートを含むすべて」 |
2:指導監督的実務経験が2年以上ある
許可を受けようとする建設業について、まず一般建設業の専任技術者の要件を満たしていなければなりません。その上で、許可を受けようとする建設業の種類で、請負代金が4,500万円以上の建設工事について、指導監督的実務経験が2年以上ある方が、特定建設業の専任技術者になることができます。
指導監督的実務経験とは、建設工事の設計や施工全般について、工事現場の主任や現場監督者として、工事の技術面に関して、総合的に指導監督した経験のことを言います。
3:国土交通大臣認定特別者である
指定建設業7業種(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業)において、特定建設業の専任技術者になることができるのは、特定建設業の専任技術者になり得る国家資格を持っている方と、国土交通大臣が認定した大臣認定特別者に限られています。指定建設業の場合には、実務経験では特定建設業の専任技術者になることはできないので、注意が必要です。
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