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リスクアセスメントとは?

リスクアセスメントとは、さまざまな産業における職場の危険因子や有害な事象をあぶり出し、その危険度を見積もる一連のプロセスを指しますが、労働安全衛生法では、リスクアセスメントに連なるリスクの除去、あるいは低減措置を図ることまでを事業者の努力義務としています。建設業界は労働災害による死亡率が全産業の3割を占めており、リスクアセスメントは重要な安全対策ツールといえます。そこで本記事では、リスクアセスメントの必要性や進め方、建設現場での事例などについて詳しく解説します。

この記事はこんな読者におすすめ

  • リスクアセスメントはなぜ必要なのか知りたい
  • リスクアセスメントの進め方について知りたい
  • リスクアセスメントの事例について知りたい
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1. リスクアセスメントとは

建設現場におけるリスクアセスメントとは、作業現場に潜むさまざまな危険や有害性を事前に見つけ出し、事故や災害を未然に防ぐための手法です。

リスクとは「起こり得る危険」を表す言葉であり、危険の度合いと起こる確率のかけ合わせが大きいほど重大なリスクとなります。リスクには必ず原因となる「危険源」があり、「ハザード」とも呼ばれます。

ハザードには作業者の不安全行動や作業上の不安全状態を指す「危険性」と、ガスや粉じん、高温など作業者の健康を損ねるおそれのある「有害性」があります。

労働安全衛生法では、潜在的な危険性や有害性を明らかにして、労働者の健康と安全を守るための措置を講じることを、事業者の努力義務としています。

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2. なぜリスクアセスメントが必要か

リスクアセスメントの先駆けとなったイギリスでは、1974年に労働安全衛生法が制定され、法規を補完する実践方法としてリスクアセスメントが導入されました。その結果、労働災害による死亡率は非常に低く抑えられています。

従来の労働災害防止対策は、発生した災害を分析し、同じような事故が起こらないように原因の調査と再発防止対策を講じる、というものでした。しかし、事故や災害が起きていない現場であっても、いつ災害が起きてもおかしくないリスクは存在しているものです。

また、技術の進歩により使用される機械や設備の種類が増え、便利な機能が搭載されるようになった反面、リスクの多様化にもつながっています。そこで、日本でもイギリスを手本として2006年に労働安全衛生法が改正され、リスクアセスメントが努力義務化されました。

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3. リスクアセスメントの進め方

英語の「アセスメント(Assessment)」は「評価する・査定する」を意味する言葉で、リスクアセスメントとはリスクを見つけ出して危険度を査定することを意味します。しかし、実際におこなわれるリスクアセスメントでは、リスクの洗い出し、危険の度合いの見積もりだけでなく、リスク低減措置の検討・実施までを含めています。
加えて、リスク低減措置を実施した後は有効性の確認をおこない、記録し、別の現場作業にも活かすことも重要です。それではステップごとのリスクアセスメントの進め方を見てみましょう。

作業場における危険源の洗い出し

危険性や有害性があったとしても、それが事故や災害に直結するわけではありません。作業者がハザード(危険源)に接近し、関与することで事故や災害のリスクへと発展します。

KY活動や安全パトロール、作業手順の見直しなどから危険源を洗い出し、「○○をすると、○○したために(ハザードへの接近)⇒××になる(災害発生)」というように「危険源に接近することで災害に至るプロセス」を予測することがリスクアセスメントの最初のステップです。

危険源ごとの重篤性と発生可能性の評価

現場や作業における危険性や有害性を洗い出したら、次にどのくらい重大な災害に結びつく可能性があるのか、どのくらいの確率で災害が発生するのか、リスクの度合いを見積もります。

負傷・疾病の重篤度(災害の程度)

負傷・疾病の重篤度 リスクポイント 災害の程度
致命的・重大

・死亡災害や身体の一部に永久的な損傷をともなう事故災害
・1ヵ月以上の休業をともなう災害
・一度に多くの被災者をともなう災害

中程度

・1ヵ月未満の休業をともなう災害
・一度に複数の被災者をともなう災害

軽度 ・休業をともなわない事故や災害・かすり傷程度の事故や災害

発生の可能性

発生の可能性 リスクポイント 内容
確実・極めて高い ・日常的に危険源に接近する・高い注意力を働かせても回避できない
可能性がある ・ときどき危険源に接近する・注意していないと事故や災害に至る
ほとんどない ・危険源にはめったに接近しない・通常の作業では事故や災害に至らない

リスクの見積もり

リスクの査定は重篤度と発生の可能性のリスクポイントを足した合計点で見積もり、点数の高い順に優先度を決定します。

重篤度

発生の可能性

負傷又・疾病の重篤度
致命的・重大
リスクポイント3
中程度
リスクポイント2
軽度
リスクポイント1
負傷又は疾病が発生する可能性 確実・極めて高い
リスクポイント3
可能性がある
リスクポイント2
ほとんどない
リスクポイント1

優先度付けとリスク低減措置の立案・実施

見積もったリスクの大きさに従って優先度を決定し、優先度の高い順に低減措置を検討します。また、リスク低減措置は「根本的な対策」から始め、根本的な改善が望めない場合に、「工学的対策」「管理的対策」「作業者を保護するための保護具」の順に検討します。

対策の優先度

リスクの見積もり 優先順位
6(3+3) 1 即座に対策すべき問題
5(3+2) 2 速やかに対策すべき問題
4(2+2) 3 何らかの対策が必要
3(2+1) 4 必要に応じて対策を講じる
2(1+1) 5 対策の必要はない

(1)根本的な対策

設計・計画段階での対策、危険な作業工程をなくす、作業方法の変更など

(2)工学的対策

ガードや安全装置、局所的な防護設備の設置など

(3)管理的対策

作業手順書やマニュアルの整備、立ち入り禁止箇所の指定、教育訓練など

(4)個人用保護具の使用

(1)から(3)までの対策でリスクを低減できない場合にのみ検討します

重大なリスクに対して適切な措置の実施に時間を要する場合は、直ちに暫定的な措置を講じなければなりません。また、リスクアセスメント実施にともない「リスクアセスメント一覧表」に以下の項目を記録します。

  • (1)洗い出した作業
  • (2)特定した危険性又は有害性
  • (3)見積もったリスク
  • (4)設定したリスク低減措置の優先度
  • (5)実施したリスク低減措置の内容

リスク低減措置の検証

リスク低減措置を決定したら現場作業に導入、実施しますが、これで終わりではありません。最も重要なことは「計画通りリスクが低減されたことの検証」です。

十分にリスクが除去・低減できていない、危険性や有害性が「残留リスク」として残っている、新たなリスクが発見された、などの場合には、実施した措置を再検討する必要があります。

また、残留リスクがすぐに除去・低減できない場合は、作業者にリスクの内容を周知し、保護具の使用と安全を確保するための作業手順書を整備し、教育訓練を実施します。

そして、リスクアセスメントの結果を記録に残し、有効性の評価をおこないます。有効性が認められた措置は他の現場や作業へも展開し、効果が十分でなかった措置については見直しと再検討をおこないます。

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4. 建設現場におけるリスクアセスメントの例

建設業は労働災害による死亡者が全産業中でもっとも多く、全体の約3割を占めています。なかでも、建設重機による災害、墜落・転落、崩壊・倒壊は「建設3大災害」と呼ばれ、重篤な労働災害発生率が高くなっています。ここでは建設3大災害におけるリスクアセスメントの事例を見ていきましょう。

事例① 建設重機による災害のリスクアセスメント

クレーン機能付きのバックホーで敷鉄板をつり上げ移動させる作業は、日常的におこなわれていますが、敷鉄板は小さいものでも1トン近い重量があり、重篤な災害の危険源となり得ます。

危険性・有害性 可能性 重篤度 見積り 優先度 低減措置
敷鉄板をつり上げた際にワイヤーが切断し、敷鉄板の下敷きになる 速やかに対策 重量に応じたワイヤーの選定と作業前点検の実施
バックホーで走行中に敷鉄板が上がってしまい、足が挟まれる 速やかに対策 ・敷鉄板を敷く前にしっかり整地する
・敷鉄板を溶接して固定する
敷鉄板が荷振れを起こして作業員に衝突 1 要対策 吊上げ時は介錯ロープを使用したうえで地切りをおこなう

墜落・転落につながる恐れがある作業のリスクアセスメント

ビルの足場組立作業などで、高所から墜落し死亡する労災は後を絶ちません。しかし、高所作業での墜落・転落はリスクアセスメントにより効果的に低減することが可能です。

危険性・有害性 可能性 重篤度 見積り 優先度 低減措置
ビル屋上の解体ガラ投棄用の開口部から墜落する 速やかに対策 開口部に囲いや手すりを設け周辺を立ち入り禁止にする
足場板のツメが折れて足場板が傾き墜落する 要対策 足場組立前に目視による足場板の事前点検をおこなう
足場や床スラブの段差につまずき転倒する 必要に応じて対策 ・足場は段差がないように組み立てる
・作業者の動線上に物を置かない

崩壊・倒壊の恐れがある作業のリスクアセスメント

建物の解体工事中に壁面が倒壊する災害事例は少なくありません。どうすれば倒壊事故を未然に防げるか、リスクアセスメントの活用は非常に重要です。

危険性・有害性 可能性 重篤度 見積り 優先度 低減措置
はつりや解体作業中にコンクリートブロック壁が倒壊して下敷きになる 速やかに対策 ・ワイヤー・チェーンブロックなどで倒壊防止措置を講じる
・作業手順書を作成する
コンクリート打設作業中に型枠支保工が倒壊する 要対策 ・支保工の組立状態が設計図通りか点検する
・点検方法などの教育の徹底
・安全な作業方法の確立
スラブ屋根上でのはつり作業中に老朽化した屋根が崩落する 要対策 ・工事開始前に構造物の老朽度・状態を調査する
・足場・作業設備の入念な準備、作業計画の周知徹底
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