建設業法は、建設業に関わる29種類の業種が、建設工事を請け負う場合に適用される法律です。適切な施工の確保や発注者の保護、建設業の健全な発展のために、さまざまな規制が設けられています。建設業は人々の生活に直結する重要な役割を果たし、公共の福祉を増進するため、手抜き工事や中抜き工事など不正な行為を抑止する法律とも言えます。また、建設業者は、建築業法だけでなく関連するさまざまな法令を遵守する義務があり、違反した場合には、違反の内容により罰則と許可行政庁による処分が定められています。ここでは、建設業法違反の例を挙げ、違反した場合の罰則と監督処分について詳しく解説します。
この記事はこんな読者におすすめ
- 建設業法を違反した場合の罰則が知りたい
- 建設業法を違反するとどのような監督処分が科せられるか知りたい
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目次
1. 建設業法に違反する例
建設業法や建設業に関連する法令に違反すると、罰則や監督処分が科せられます。どのような場合に罰則や監督処分が科せられるのか、例を挙げて説明していきましょう。
刑法違反の場合
刑法違反の場合、建設業許可の取り消しや営業停止処分が科せられることがあります。例えば、傷害、暴行、脅迫、背任などの刑法違反では、罰金刑であっても建設業の許可が取り消しになります。また、建設業に関連するものとして公契約関係競売等妨害罪、談合罪、贈賄罪、詐欺罪などでは、刑に処せられたのが代表権のある役員の場合最長1年間、代表権のない役員や使用人の場合は120日以上、それ以外の場合には60日以上の営業停止処分が科せられます。
建設業の許可を受ける許可要件のひとつに、「欠格要件に該当しないこと」があります。欠格要件の中には、刑法違反に関連する次の項目があります。
- 禁錮刑以上の刑に処せられ、刑が終わり、または執行猶予期間を満了してから5年を経過していない。
- 建設業法、建築基準法、刑法の一定の法令違反に対して罰金刑以上の刑に処せられ、その刑が終了し、または執行猶予期間を満了してから5年を経過していない。
刑法違反によって欠格要件に該当し、建設業許可が取り消されると、5年間は建設業許可を受けることができないため、500万円未満の工事しかおこなうことができなくなります。刑法違反に関しては、建設業許可を受ける際や、受けた後にも大きく影響がある法律であることを念頭に入れておく必要があるようです。
許可なく一定額を上回る契約を結んだ場合
建設業の許可には、下請契約の規模により「一般建設業」と「特定建設業」の区別があります。下請契約であっても、4,500万円(税込)(建設工事業では7,000万円(税込))以上になる下請契約をおこなう場合には、特定建設業許可が必要です。
特定建設業の許可がない元請業者が、4,500万円以上の下請契約を締結した場合には、「無許可業者等との下請契約」にあたり、建設業法第16条「下請契約の締結の制限」の違反になります。その場合、元請業者は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が、特定建設業許可のない元請業者と契約した下請負事業者には「7日以上の営業停止処分」が科せられることになります。
前出の通り、建設業法違反で罰金刑以上の刑に処せられた場合、欠格要件に該当し、建設業許可が取り消されることになるので注意が必要です。
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2. 建設業法に違反した場合の罰則
建設業法の第8章において、建設業法に違反した場合の罰則が定められています。罰則の内容と該当する違反行為は以下の通りです。
3年以下の懲役または300万円以下の罰金となる場合(建設業法第47条)
- 建設業許可を受けないで建設業を営んだ
- 特定建設業許可がない者が元請業者となり、4,500万円(建築一式工事の場合7,000万円)以上の下請契約を締結した(令和5年1月1日より)
- 営業停止処分に違反して営業した
- 営業禁止処分に違反して営業した
- 虚偽又は不正の事実に基づいて許可(許可の更新も含む)を受けた
ただし、情状により、懲役または罰金を併科することがある。
6ヵ月以下の懲役または100万円以下の罰金となる場合(建設業法第50条)
- 建設業許可申請書に虚偽の記載をして提出した
- 変更届に虚偽の記載をして提出、または届出をしなかった
- 経営状況分析申請に虚偽の記載をして提出した
- 経営規模等評価申請に虚偽の記載をして提出した
- 建設業許可の基準を満たさなくなった、あるいは欠格要件に該当したのに届け出をしなかった
ただし、情状により、懲役または罰金を併科することがある。
100万円以下の罰金となる場合(建設業法第52条)
- 請け負った工事現場に主任技術者または監理技術者を置かなかった
- 土木一式工事または建築一式工事の施工において専任技術者を置かなかった
- 建設業許可の効力を失った後、または許可取消処分や営業停止処分を受けた後、2週間以内に注文者に通知しなかった
- 登録経営状況分析機関、国土交通大臣、都道府県知事からの求めに応じた報告や資料の提出をしない、または虚偽の報告や資料を提出した
- 国土交通大臣または中小企業庁長官の求めに応じた報告をしない、または虚偽の報告をした
- 国土交通大臣または中小企業庁長官の求めに応じた中間検査や竣工検査等を拒否、妨害、または忌避した
10万円以下の過料となる場合(建設業法第55条)
過料とは、刑罰の罰金とは異なり、以下の義務違反に対して科されるもので、行政上の秩序罰です。
- 廃業等の届出を怠った
- 建設工事紛争審査会の調停の出頭要求に応じなかった
- 営業所及び工事現場に業者名、国土交通省例で定める事項を記載した標識などを掲示しない
- 無許可業者が許可を受けた建設業者であると誤認される表示をした
- 帳簿の不備、帳簿に未記載、帳簿に虚偽記載、帳簿を保存しない場合
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3. 建設業法に違反した場合の監督処分
建設業者が、建設業法や建設業に関連する他の法令に違反した場合など、不正行為がおこなわれた際に、前述の罰則とは別に許可行政庁より「監督処分」が科せられます。前述の罰則の目的が法律の遵守を間接的に図るのに対し、監督処分は法の遵守を直接図るための行政処分です。監督処分は、許可行政庁に備えられた「建設業者監督処分簿」に掲載され、処分年月日や処分内容について公表されます。
監督処分には、不正行為などの内容によって、「指示」「営業停止」「許可の取消し」の3種類があり、監督処分を決定するための基準に基づいて、不正行為などの内容や程度、社会的影響、情状などを総合的に判断して決定されます。それぞれ説明していきましょう。
指示処分(業務改善命令)
建設業者が建設業法に違反した場合に、監督行政庁による指示処分の対象になります。建設業法違反や不適切な事実を是正するために、監督行政庁が建設業者に対して具体的に取るべき措置を命令するものです。
営業停止処分
建設業者が「指示処分」に従わない場合に、「営業停止処分」となります。一括下請負禁止規定違反、独占禁止法や刑法など他の法令に違反した場合には、指示処分無しで営業停止処分を受けることもあります。
営業停止の期間は、監督行政庁が1年以内の期間で決定します。営業停止処分期間中には、以下の表の通り、おこなえない行為がある一方、おこなえる行為もあります。
営業停止処分期間中にはおこなえない行為
②営業停止処分を受ける前に締結された請負契約の変更であって、工事の追加に係るもの
③営業停止期間満了後における新たな建設工事の請負契約の締結に関連する入札、見積り、交渉等
④地域限定付きの営業停止処分の場合、当該地域内における①~③の行為
⑤業種限定付きの営業停止処分の場合、当該業種における①~③の行為
⑥公共工事又はそれ以外の工事限定の営業停止処分の場合、当該の公共工事またはそれ以外の工事における①~③の行為
営業停止期間中でもおこなえる行為
②営業停止処分前に締結された請負契約に基づく建設工事の施工
③施工の瑕疵に基づく修繕工事等の施工
④アフターサービス保証に基づく修繕工事等の施工
⑤災害時における緊急を要する建設工事の施工
⑥請負代金等の請求、受領、支払い等
⑦企業運営上必要な資金の借入れ等
許可取消処分
建設業許可を不正手段で受けたり、営業停止処分中に営業をしたりすると、監督行政庁による「建設業許可取消処分」の対象となります。また、以下の法律では、違反の内容によって、許可取消処分になる場合があります。
- 建設業法(罰金刑以上の全てについて)
- 暴力団による不当な行為の防止等に関する法律(罰金刑以上の全てについて)
- 刑法(傷害、暴行、脅迫、背任の罪等)
- 暴力行為等処罰に関する法律(罰金刑以上の全てについて)
- 建築基準法(第9条第1項または10項前段の規定による特定行政庁又は建築監視員の命令に違反した場合に係る罰則)
- 宅地造成等規制法(第14条第2項、3項または4項前段に規定による都道府県知事の命令に違反した場合に係る罰則)
- 都市計画法(第81条第1項の規定による国土交通大臣、都道府県知事または市長の命令に違反した場合に係る罰則)
- 景観法(第64条第1項の規定による市町村長の命令に違反した場合に係る罰則)
- 労働基準法(第5条および第6条の規定に違反したものに係る罰則)
- 職業安定法(第44条の規定に違反したものに係る罰則)
- 労働者派遣法(第4条第1項の規定に違反したものに係る罰則)
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